高密度なデータの視覚化に関するベスト プラクティス

多くの場合、多数のフィーチャが含まれているレイヤーは、うまく視覚化することが困難です。 通常、高密度なレイヤーは、フィーチャが密集しているか重なり合っているために、フィーチャを区別したり空間パターンを認識したりすることが困難であるか不可能です。 技術の進歩によって表示できるフィーチャの数は増えていますが、すべてのフィーチャを描画できることは、すべてを描画しなくてはならないことを必ずしも意味しません。 むしろその逆で、フィーチャが増えると、マップがわかりにくくなることがよくあります。 高密度なデータを効果的に視覚化することは、すべてのフィーチャを表示することとは違います。

See an example of clustering for visualizing thousands of power plants in the ArcGIS Instant Apps Media app. Use the swipe tool to compare the clustered layer to the unclustered version.

フィーチャの密度は、マップ縮尺に対して相対的なものです。 たとえば、一連のポイントは、小縮尺 (縮小) では密集し、大縮尺 (拡大) では分散して表示されます。 密集したデータを表現する最適な方法を決定する際には、まずユーザーが通常表示する縮尺レベルを理解する必要があります。 たとえば、市の最も混雑する交差点を中心として交通事故を表示する場合、交差点の周辺で複数のポイントがグループ化されるのがわかります。 しかし、小縮尺に縮小すると、すべてのポイントが視覚的にマージされ、表示するつもりのグループ化がわからなくなります。 国内すべての事故を多数のドットとしてマップ上に表示すると、交通事故の発生は確認できますが、発生した経緯、理由、場所に対する洞察は得られません。

Map Viewer は、高密度なデータセットのフィーチャの分布から複数の縮尺で意味を抽出するために、さまざまな方法を提供しています。 ヒート マップやクラスタリングなどの視覚的効果だけで、十分な場合もあります。 しかし、多くの場合は、これらの方法で明らかにされた視覚的パターンから、データに対してより適切な質問が導かれ、回答のためにエリアで集約する必要性が生じます。

次のセクションでは、Map Viewer で高密度なデータを視覚化するためのさまざまな方法と、それらの方法を適用するためのベスト プラクティスについて説明します。

クラスタリング

多数のポイント フィーチャが含まれているレイヤーは、誤解を招く可能性があります。 ポイントが数個しかないように見えても、実際は数千個あるかもしれません。 マップ上で多くのポイントが密集し、重なり合い、積み重ねられているとき、データを写実的に表示することは困難です。

クラスタリングは、この問題に対して迅速な解決策を提供します。 ポイント レイヤーにクラスタリングを適用すると、マップ上の一定の相互距離内にあるポイント フィーチャは 1 つのシンボルにグループ化されます。 通常、クラスターは、各クラスター内のフィーチャ数に比例するサイズのシンボルで表現されます。 小さいクラスター シンボルはポイントが少ないことを示し、大きいクラスター シンボルはポイントが多いことを示します。 クラスターの半径を設定して、クラスター別にグループ化されるポイント フィーチャの数を調整できます。

ヒント:

例を見る ArcGIS Instant Apps メディア アプリの「数千の発電所を視覚化するためのクラスタリング」の例をご参照ください。スワイプ ツールを使用して、クラスタリングされたレイヤーとクラスタリングされていないレイヤーを比較します。

クラスタリングは複数の縮尺で動的に適用されます。つまり、縮小表示するにつれて、グループごとに集約されるポイント数が増えてグループの数が減少し、拡大表示するにつれて、クラスター グループの数が増加します。 拡大/縮小を行い、縮尺を変えると例のクラスターがどのように変化するか確認してください。

レイヤーにクラスタリングを適用するときは、次のベスト プラクティスをお勧めします。

  • まず、デフォルトのクラスター設定をレイヤーに適用します。 次に、クラスターの半径、シンボル サイズ、クラスター シンボルのスタイルを変更するなどして、さまざまなクラスター設定を試してみます。
  • レイヤーがカテゴリ別にスタイル設定されている場合、クラスターは各クラスターにおける主要カテゴリを表示します。 また、パイ チャートのクラスターを選択して、各クラスター内のカテゴリの割合を表示することもできます。
  • クラスター フィールドを構成して、数値フィールドの平均値や文字列フィールドの主要値などのサマリー統計を作成できます。 その後、新しく作成した統計サマリー フィールドを使用して、レイヤーをスタイル設定したり、ラベルおよびポップアップをカスタマイズしたりできます。
  • クラスター数を表示するラベルを構成します。レイヤーが属性を使用してスタイル設定されている場合は、その属性をクラスター ラベルに使用します。 たとえば、レイヤーに区画が平方フィート当たりの値で表示されている場合は、各クラスター内のすべてのポイントの平方フィート当たりの平均値を表示するようにクラスター ラベルを構成できます。
  • クラスター ラベルをさらにカスタマイズするには、ラベル クラスを使用します。 たとえば、2 つの属性 (地震の平均マグニチュードと地震の回数など) に基づいて各クラスターにラベルを付けることができます。この場合は、属性ごとに異なるラベル スタイルを使用します。
  • デフォルトのクラスター ポップアップを維持するか、カスタム ポップアップを構成して、各クラスターについて強調する情報を表示します。 ArcGIS Arcade 式を使用して、計算結果などのデータに関する情報を表示することを検討します。 たとえば、マップ レイヤーが交通事故データを表示している場合、各クラスターで表される死者数と、前回のレポート期間からその数が増加したか減少したかを表示する式を作成できます。

クラスタリングの詳細

ヒート マップ

クラスタリング透過表示ブルームと同様に、ヒート マップを使用して重なり合う多数のポイント フィーチャを視覚化することができます。 ヒート マップは、ポイント フィーチャをラスター サーフェスとして表示して、連続的なカラー ランプに沿ってポイントの密度が相対的に高いエリアを強調します。 ヒート マップは、位置に基づいてフィーチャの密度を表示することに加えて、レイヤー内の数値データの値に基づいてポイントの密度を重み付けする効果的な方法も提供します。

ヒント:

例を見る ArcGIS Instant Apps メディア アプリの「自動車の死亡事故のヒート マップ」の例をご参照ください。スワイプ ツールを使用して、2 つのバージョンのヒート マップを比較します。 最初のヒート マップは、死亡事故の位置を使用してポイント密度を計算し、密度の最も高いエリアを黄色で表示しています。 2 つ目のヒート マップは、レイヤー内で重み付けされたデータ値を使用して計算された高密度なエリア (飲酒運転のドライバーが関与した交通事故数) を、死亡事故の位置に加えて表示しています。

レイヤーにヒート マップを適用するときは、次のベスト プラクティスをお勧めします。

  • 数個のポイント フィーチャしか存在しない場合は、ヒート マップを使用せずに、実際のポイントをマッピングします。
  • ヒート マップを適用するときは、データに適切なカラー ランプを選択し、スライダーを調整して、密度サーフェスへの色の適用方法を変更します。 また、影響範囲を調整して、密度のクラスターを大きくして色の変化を滑らかにしたり、クラスターを小さくして色の変化を大きくしたりすることもできます。
  • 伝えたいストーリーまたはメッセージに応じて、ヒート マップの密度の計算に含めるレイヤー内の数値データ値の選択を検討します。 これにより、位置のみを使用して計算された密度とは異なるパターンが明らかになる場合があります。
  • ヒート マップは、いくつかの縮尺レベルのみで表示する場合に適しています。 ヒート マップは、縮小すると濃くなり、拡大すると薄くなります。 拡大/縮小しても意味のあるヒート マップにするには、レイヤーに表示範囲を設定して、目的のメッセージを適切に伝えるズーム レベルのみでヒート マップが表示されるようにします。

ヒート マップの詳細

透過表示

多数のフィーチャが重なり合っているレイヤーを視覚化するとき、それらの密度を適切に視覚化するために個々のフィーチャの透過表示を変更することができます。 マップに複数のレイヤーがある場合、各レイヤーに透過表示を適用して、レイヤーの表示設定を相互関係の中で変更することもできます。 透過表示は、積み重なったポリゴンやポリラインを視覚化するときに特に有効です。クラスタリングビニングヒート マップなどの方法は、ポイント フィーチャ レイヤーのみに使用できるためです。

たとえば、透過表示を使用して、10 年間に鉄砲水の警告が発生したエリアを表示できます。 エリアに発生した警告数に基づいて重なり合うポリゴンに透過表示を適用することで、警告数が多いエリア (暗く不透明なエリア) と鉄砲水の警告数が少ないエリア (明るく透明なエリア) を区別することができます。

ヒント:

例を見る ArcGIS Instant Apps メディア アプリの「10 年間に発生した鉄砲水の警告を視覚化するための透過表示」の例をご参照ください。スワイプ ツールを使用して、透過表示が適用されたレイヤーを透過表示のないレイヤーと比較します。 透過表示が適用されたマップは、警告が少ないエリアを透明に (明るく)、警告の多いエリアを不透明に (暗く) 表示しています。 各ポリゴンは、1 ~ 12 時間続いた 1 つの鉄砲水の警告を表し、塗りつぶしの透過表示が 96% の青で視覚化されています。

レイヤー内のフィーチャに透過表示を適用するときは、次のベスト プラクティスをお勧めします。

  • 最も高密度なデータを視覚化するには、90 ~ 99% の透過表示の値が最適です。
  • 複数のレイヤーがあるマップで特定のレイヤーを強調するには、不透明度を 100% (透過表示なし) にして、他のレイヤーに透過表示を追加します。
  • 同じまたは類似するフィーチャを表示するレイヤーがマップに複数ある場合、各レイヤーに同じレベルの透過表示を適用すると、上の最初の例で示されている効果を実現できます。
  • 異なるタイプのフィーチャを表す複数のレイヤーがマップに含まれている場合は、透過表示とブレンド モードを組み合わせて、マップ内でさまざまなタイプのフィーチャの密度を表示することを検討します。 たとえば、洪水の密度が高いエリアを竜巻の密度が高いエリアと比較して視覚化するには、各レイヤーを異なる色と同じレベルの透過表示でスタイル設定して、最上位レイヤーに平均ブレンド モードを適用します。

透過表示の詳細

ブルーム

ブルームは、レイヤー内のフィーチャを明るくする効果で、明るい領域の境界から伸びる光の縞を付けてフィーチャが明るく光っているように表示します。 ブルーム効果は、多数のフィーチャが重なり合うエリアほど明るく強度が高くなります。これは、密集したデータの視覚化に効果的な方法です。

ブルーム効果の強度、フィーチャ周囲のぼかしの半径、ブルームを適用するために必要な色の明るさを定義する閾値をカスタマイズできます。 ブルーム効果は、火災、火山噴火などのデータを視覚化するためによく使用されます。

ヒント:

例を見る約 50 年間の地震活動を表示するレイヤーに適用されたブルーム」の例をご参照ください。 長年にわたり地震が多いエリアほど、地震活動の少ないエリアより明るくなっています。

レイヤー内のフィーチャにブルームを適用するときは、次のベスト プラクティスをお勧めします。

  • 暗いベースマップを使用します。
  • ブルーム効果の有効性は、マップの縮尺、データ密度、レイヤー スタイルに使用される色によって変わります。 あるレイヤーでうまく機能するパラメーターが、他のレイヤーに適切であるとは限りません。 求める効果を得るために、強度、半径、閾値のパラメーターを試してください。
  • 多数のポイントがある地球的な規模では、小さなシンボル サイズと小さな半径 (約 0.1 ピクセル) を使用します。 ブルーム効果でより多くの色をキャプチャするには、低い閾値 (15% など) を試してください。
  • ブルーム効果をラインに適用して、高速道路など重なり合うラインの密度を表示することができます。 重なり合う太いラインは、重ならない細いラインより明るく表示されます。

ブルーム効果の詳細

ビニング

クラスタリングと同様に、ビニングは、マップ上で密集し、重なり合い、積み重ねられている多数のポイント フィーチャ、ライン フィーチャ、ポリゴン フィーチャを含む大規模なデータセットの集計ビューを提供します。 ビニングは、同じサイズまたは面積のビンと呼ばれる集計ポリゴンに、ポイント フィーチャを集計または集約します。 各ビンは、単一のフィーチャを含む、その境界内のすべてのフィーチャを表します。 この点は、1 つのフィーチャでもクラスター半径外にあればクラスターには含まれないクラスタリングとは異なります。 さらに、ビニングではマップの大半が隠蔽されますが、クラスタリングでは他のフィーチャやベースマップが部分的に見えたままになります。

注意:

基になっているデータがビニング プロセスによって誤って表現される可能性があるため、ライン フィーチャとポリゴン フィーチャをビニングするときは慎重に行うことをおすすめします。

ビニングは、フィーチャの通常サイズがビン サイズより小さい場合に使用するのが最適です。 不規則な形状のフィーチャは、一部のフィーチャがそのフィーチャの大部分を含んでいないビンに配置される可能性があるため、誤って表現される場合があります。 結果として、大きなフィーチャがカバーしている一部のエリアには、そのエリアが大きなフィーチャで完全にカバーされている場合でも、ビンがまったく表示されない場合があります。 ガイドラインとして、区画、建物、暗渠、コネクタなどの小さなフィーチャはビニングに適しています。 郡、州、国のように、大きくて不規則な形状のフィーチャを集約する必要はありません。

ヒント:

例を見る 陰影起伏の例については、米国の大学を示すレイヤーに適用されたビニングの例をご参照ください。

Map Viewer でレイヤーにビニングを適用するときは、次のベスト プラクティスをお勧めします。

  • はじめに、デフォルトのビン設定をレイヤーに適用します。 次に、ビン サイズやスタイルを変更するなどして、さまざまな設定を試してみます。
  • マップを表示する範囲に適したビン サイズを設定します。
  • ビン フィールドを構成して、数値フィールドの平均値や文字列フィールドの主要値などのさまざまなサマリー統計を作成できます。 その後、新しく作成した統計サマリー フィールドを使用して、レイヤーをスタイル設定したり、ラベルおよびポップアップをカスタマイズしたりできます。
  • 集計数を表示するラベルを構成します。レイヤーが属性を使用してスタイル設定されている場合は、その属性をラベルに使用します。 ビン ラベルをさらにカスタマイズするには、ラベル クラスを使用します。
  • デフォルトのビン ポップアップを維持するか、カスタム ポップアップを構成して、各ビンについて強調する情報を表示します。 ArcGIS Arcade 式を使用して、計算結果などのデータに関する情報を表示することを検討します。

ビニングの詳細

ヒント:

例を見る 高密度なデータを集約する方法には、Map Viewerポイントの集約解析ツールを使用する方法もあります。 このツールで、集約するポイント レイヤーと、統計サマリーの計算に使用するポリゴン レイヤーを選択し、フィーチャ レイヤーを作成します。 「郡別のテキサス州の山火事マップを視覚化するための集約」の例をご参照ください。

表示縮尺範囲

大きなデータセットを特定の縮尺で視覚化することに意味がない場合があります。 たとえば、国勢調査区を地球規模のマップ縮尺で表示することは意味がありません。通常、国勢調査区は、近隣地域と小さなコミュニティを表すためです。 その縮尺では、多くのポリゴンが 1 ピクセルより小さく表示され、マップの利用者に価値あるものになりません。

表示縮尺範囲を設定することで、フィーチャが意味を持って表示される縮尺を指定することができます。 また、ブラウザーへの初期データのダウンロードを減らすことにも役立ちます。

表示縮尺範囲の設定には、レイヤーの最小縮尺と最大縮尺を設定します。 最小縮尺はレイヤーを表示できる縮小の下限、最大縮尺はレイヤーを表示できる拡大の上限を定義します。 最小縮尺だけを定義して、最大縮尺は定義しないこともできます。 最小縮尺の設定は、データのダウンロード サイズの削減に大きな影響を及ぼします。

ヒント:

例を見る異なる表示縮尺範囲を使用して複数の解像度で視覚化できるマップ」の例をご参照ください。 このマップは、米国の州、郡、国勢調査地区を表すレイヤーに設定された表示範囲を使用して、車のない世帯のパーセンテージを示しています。 拡大すると、同じデータが解像度の高いジオメトリで読み込まれ、詳細情報が提供されます。

表示縮尺範囲の設定の詳細

縮尺の閾値

クラスター化またはビン化したデータを使用する場合、フィーチャを集約するのではなく、個別に表示する方が合理的であることがあります。 たとえば、市レベルの縮尺でバイク シェア ステーションをクラスター化またはビン化して表示すると有意義な概観を得られますが、近傍レベルの縮尺でマップを表示する場合は各ステーションの正確な位置を表示する必要になるかもしれません。

縮尺の閾値を設定することで、フィーチャをクラスターまたはビンで表示する場合の縮尺を指定できます。 縮尺の閾値よりも縮小すると、フィーチャはクラスター化またはビン化されます。 縮尺の閾値よりも大きく拡大すると、フィーチャは個別で表示されます。

クラスター化するときの縮尺の閾値を設定する方法

ビン化するときの縮尺の閾値を設定する方法