リアルタイム解析

リアルタイム解析は、フィードを介して取り込まれているデータに対して処理を実行し、メッセージが受信されたときに各メッセージを解析します。 リアルタイム解析は、特にデータの変換、ジオフェンシング、インシデント検出に使用されます。 解析が完了すると、フィーチャ レイヤーにデータが格納されたり、電子メール アラートが送信されたりするなど、1 つ以上の出力が得られます。

リアルタイム解析の例

  • 緊急作業マネージャーとして、フィールド作業員の現在の位置をリアルタイムに追跡してアーカイブし、作業員が制限区域内にいる場合は警告を送信し、割り当てられた作業の基地からのフィールド作業員の距離を計算します。
  • 石油ガス会社のサプライ チェーン アナリストとして、自動識別システム (AIS) のデータ ストリームに接続して船舶を監視し、予想される到着情報を計算し、船舶が対象地域内または対象地域外にいつ存在するかを把握します。
  • 多数のセンサーを管理する環境科学者として、後でビッグ データ解析で処理するために、観測データをアーカイブします。

リアル タイム解析のコンポーネント

ビッグ データ解析には、以下の 4 つのコンポーネントがあります。

  • フィード:
    • フィードは、ArcGIS Velocity で受信されるリアルタイムのデータ ストリームです。 フィードは通常、IoT (Internet of Things) プラットフォーム、メッセージ ブローカー、サードパーティ API など、観測データの外部ソースに接続します。 フィードは受信した表形式データ、ポイント データ、ポリライン データ、ポリゴン データを変換して解析および視覚化のために公開します。
  • ソース:
    • ビッグ データ解析では、静的データまたはほぼリアルタイムのデータを読み込むために、データ ソースが使用されます。 リアル タイム解析では、データ ソースは、イベントに情報を付加したり、イベントをフィルター処理したり、イベントに結合したり、イベントからの距離を計算するために、補助的な空間データセットまたは表形式データセットを必要とするツールと共に使用されるデータを読み込みます。
    • リアルタイム解析では、データ ソースは、[フィーチャの結合][ジオメトリによるフィルター処理][距離の計算] などの適用可能なツールにおいて、セカンダリ データセットとしてのみ使用されます。
  • ツール:
    • ツールは、フィードから入力されたイベントを処理または解析します。 ユース ケースに応じて、リアルタイム解析にツールを含めないか、複数のツールを含めます。
    • ツールを互いに接続することができ、その場合、1 つのツールの出力が別のツールの入力を表します。
    • ビッグ データ解析で使用可能なすべてのツールがリアル タイム解析で使用可能であるとは限りません。 これは、[ホット スポット分析] などの一部のツールがデータセット全体を一度に解析するためです。 これに対して、リアルタイム解析は、受信したイベントごとに処理します。
  • 出力:
    • 出力は、リアルタイム解析によってイベントが処理されるときに、各イベントを使用して実行される必要があることを定義します。
    • 新規または既存のフィーチャ レイヤーへのフィーチャの格納、電子メールの送信、Kafka または RabbitMQ へのメッセージの送信などの、多くの出力オプションを使用できます。 詳細については、「解析出力の基礎」をご参照ください。
    • ツールまたはフィードから受信したイベントを、複数の出力に送信することができます。

ステートレスな処理とステートフルな処理

リアルタイム解析のツールのほとんどは、ステートレスに動作します。つまり、受信した各観測データが処理され、以前の観測データのメモリ内レコードは保持されません。 ただし、一部のツールは、個別の観測データではなく、トラッキングに対してステートフルに動作します。

ステートフルなツールは、トラッキング単位で連続する複数の観測データを収集し、各トラッキングの空間または属性条件を比較して変化を検出します。 各トラッキングの観測データを受信すると、そのトラッキングの観測データの小さなキャッシュに追加されます。 これは、たとえば、最新の観測データを以前の観測データと比較して、トラッキングのジオフェンスへの出入りを検出するために使用されます。

使用可能なステートフル ツールは以下のとおりです。

ステートフル ツールは、メモリ内に多数の観測データを保持することはできないため、メモリ リソースの過剰な消費を避ける目的で、各トラックのキャッシュは、指定した期間が経過した古い観測データを定期的に消去します。

一部のステートフル ツールでは、[結合先のタイム ウィンドウ] パラメーターを使用して消去期間を指定できます。 消去が行われると、[結合先のタイム ウィンドウ] パラメーターで指定した値よりも古い観測データがメモリから消去されます。 消去は、ステートフルな処理を行う目的で保持されたメモリ内の観測データのみに影響することに注意してください。 消去は出力に送信された観測データには影響を与えないため、データは削除されません。

[結合先のタイム ウィンドウ] パラメーターは、任意の 1 つのトラックの観測データ間の予想される最長期間と同じかそれ以上の値に設定してください。 たとえば、車両が 5 分おきに位置情報を報告し、[ジオメトリによるフィルター処理] ツールを使用して各車両が特定のエリアに入るタイミングを検出している場合、フィルターの [結合先のタイム ウィンドウ] 値を 5 分より若干長めに設定し、消去される前に複数の観測データを受信できるようにします。 このタイム ウィンドウを 5 分未満に設定すると、キャッシュにはトラックごとに 1 つの観測データしか含まれないため、ジオフェンスに対する車両の空間リレーションシップが外側から内側に変化したことを判断することができません。 [モーションの統計情報の計算]、[インシデントの検出]、[ジオメトリによるフィルター処理]、および [フィーチャの結合] の各ツールには、[結合先のタイム ウィンドウ] パラメーターが含まれています。

ジオフェンス

ジオフェンシングは、リアルタイム空間解析の典型的な方法で、フィーチャ (多くの場合はトラック ポイント) を対象地域 (多くの場合はポリゴン エリア) に対して評価します。 最も一般的な方法としては、ポイントに基づく観測データを解析し、仮想の境界への出入りを判断します。

一部のリアルタイム解析ツールやビッグデータ解析ツールでは、ジオフェンシングを実行することで、ターゲット フィードまたはデータ ソース内のフィーチャと、空間結合フィーチャ セット (ジオフェンス) との間で発生する一定の空間リレーションシップを特定できます。 ジオフェンスとして使用するフィーチャは、ジオフェンシング ツールの結合ポートに接続する必要があります。 ジオフェンスには、ポイント、ライン、またはポリゴンを設定できます。 使用可能な空間リレーションシップは、入力ターゲット データおよび結合データのジオメトリ タイプによって異なります。

ジオフェンシングをサポートするリアルタイムおよびビッグ データ解析ツールは以下のとおりです。

詳細や使用例については、「ジオフェンシング解析」をご参照ください。

動的ジオフェンシング

一部のリアルタイム解析ツールでは、動的ジオフェンシングを実行して、ターゲット フィード内のフィーチャと、別の結合フィード内のフィーチャ セット (ジオフェンス) との間の空間リレーションシップを特定できます。 ジオフェンシングを実行するツールは、指定した任意のトラック ID の最新の観測データをジオフェンスとして使用します。

  • 結合ポートにフィードが接続されている場合、結合フィーチャ (ジオフェンス) は、結合フィード内の受信フィーチャに基づいて継続的に更新されます。 この場合、ターゲット フィードと結合フィードの両方で変化しているフィーチャに基づいて、ジオフェンシングが動的に実行されます。
  • 動的ジオフェンシングでは、[タイム ウィンドウの結合] パラメーターが必要です。
    • 結合フィードに END_TIME タグが付いたフィールドが含まれておらず、結合フィーチャの最新の観測データが指定した結合タイム ウィンドウよりも古い場合、観測データはツールのメモリから消去され、解析には含まれません。
    • 結合フィードに END_TIME タグが付いたフィールドが含まれている場合、END_TIME タグが付いたフィールドの値に応じたタイミングか、結合タイム ウィンドウが終了するタイミングのどちらか早い方で、フィーチャはジオフェンス ストアから消去されます。

動的ジオフェンシングをサポートするリアルタイム解析ツールは以下のとおりです。

注意:

リアルタイム解析でサポートされるジオフェンスの最大サイズは、768 MB を超えることはできません。

詳細や使用例については、「ジオフェンシング解析」をご参照ください。