高精度なデータ収集の準備

位置情報を収集する際に必要な精度は、作業しているプロジェクトの種類によって異なります。

マップ ツアーなどのプロジェクトでは、ランドマーク付近のポイントで十分な情報が得られる場合があります。 資産管理など、他のプロジェクトでは、収集される位置情報は実際の位置の数センチメートル以内でなければならない場合があります。

デバイスの位置情報サービスを使用して位置情報を収集するとき、位置情報は GPS、モバイル データ通信、Wi-Fi、Bluetooth ネットワークなど、さまざまなソースから判定できます。 これらのソースの精度は変化し、デバイスの位置情報サービスは常に信頼できるわけではありません。 高い精度と信頼できる品質管理が必要なデータ収集を行うには、通常は専門家向けまたは高精度な GPS 受信機を使用することが最善の選択です。

注意:

Field Notes ポッドキャスト: 高精度なデータ収集の基本(12 分) の次のエピソードを聴くことで、高精度なデータ収集の基本について学ぶこともできます。

GNSS (全世界的航法衛星システム) は、航法衛星システムの標準的な総称です。 GNSS 受信機は、さまざまな航法衛星システムを使用できます。一方、GPS 受信機は、全地球測位システム (GPS) 航法衛星システムのみを使用できます。 GPS という用語は両方の受信機を指す用語として広く使用されているため、このヘルプでは GPS を総称として使用しています。

高精度な GPS 受信機は、GPS 衛星からの情報を使用して、地理的な位置を正確に計算します。 これらの受信機の精度は、衛星信号を追跡および処理する機能に応じて、数メートルからセンチメートルになります。 GPS 衛星信号は、さまざまな周波数で伝送されます。 GPS 受信機が使用する周波数が高いほど、結果的に多くの信号も受信することになるため、精度が高くなります。これは、全世界的航法衛星システム (GNSS) の数についても当てはまります。受信機が使用するシステムが多いほど (多くの信号を受信するほど)、精度が高くなります。 多数の航法衛星システムを利用できます。 ただし、通常は GPS 受信機の精度が高くなるほど、受信機は高価になり、現場に持ち運ぶことが困難になります。

受信機の選択

AppStudio は、デバイスに組み込まれた GPS を使用したり、外部の GPS 受信機を追加して高精度なデータを取得することができます。 多くの GPS 受信機を入手できますが、すべての機種を AppStudio で直接使用できるわけではありません。 GPS 受信機を AppStudio で使用するには、受信機が NMEA センテンスの出力をサポートしている必要があります。

位置の精度を改善するために、差分補正をサポートする GPS 受信機の使用を検討してください。 iOS デバイスを使用している場合は、iOS でサポートされている GPS 受信機の 1 つを使用する必要もあります。 Esri は、Android または Windows でサポートされている GPS 受信機のリストを公開していませんが、Android および Windows でテストを行った受信機のリストを提供しています。

ヒント:

ほとんどの高精度の GPS 受信機は AppStudio が使用する NMEA センテンスをサポートしていますが、AppStudio に接続する前に、受信機がこれらの NMEA センテンスをサポートしているかどうかを受信機のユーザー マニュアルで確認することをお勧めします。

NMEA のサポート

NMEA 0183AppStudio が GPS 受信機との通信に使用するデータ仕様規格です。 NMEA メッセージには、センテンスと呼ばれる複数の行が含まれています。 AppStudio は、NMEA メッセージの特定のセンテンスを読み取ることで、緯度、経度、高さ、補正タイプなどの GPS 情報を取得します。

AppStudioNMEA 4.00 および 4.10 をサポートしています。 次の NMEA センテンスを読み取ることができます。

  • GGA: 時間、位置、補正関連データ
  • GSA: GNSS DOP およびアクティブな衛星
  • GSV: GNSS 衛星の位置や信号強度
  • RMC: 時刻、緯度・経度などの基本的な GNSS データ
  • VTG: 進行方向と対地速度
  • GST: GNSS 疑似誤差統計

AppStudio は、特定の座標の精度情報を含む GST センテンスを受信する場合、それらを使用して精度を判定します。 デフォルトでは、水平精度と鉛直精度の数値は、二乗平均平方根 (RMS) で指定されます。 RMS を使用した信頼度は、水平精度は 63 ~ 68%、鉛直精度は 68% です。

推定精度

AppStudio が GPS 受信機から GST センテンスを受信せず、GSA センテンスを受信した場合、AppStudio は水平精度低下率 (HDOP) と垂直精度低下率 (VDOP) を使用して精度を推定します。 推定水平精度は HDOP に 4.7 を乗算して算出され、推定垂直精度は VDOP に 4.7 を乗算して算出されます。

差分補正

位置の精度を改善するために、差分補正をサポートする GPS 受信機の使用を検討してください。 差分補正テクノロジは、基準局 (基地局) を利用して精度を大幅に改善します。 基準局は、既知の位置に設置されている別の GPS 受信機です。 基準局は、衛星信号に基づいて自分の位置を推定し、この推定位置を既知の位置と比較します。 これらの位置の差異が、GPS 受信機 (ローバー) が計算した推定 GPS 位置に適用され、より正確な位置が取得されます。 差分補正を行うには、受信機が基準局から一定の距離内にある必要があります。 差分補正は、現場でリアルタイムに適用したり、オフィスでのデータの後処理時に適用したりできます。

差分補正は、パブリックまたは商用のソースによって指定できます。 最も広く使用されパブリックにアクセスできるリアルタイムの補正ソースの 1 つは、SBAS (衛星型衛星航法補強システム) です。米国では一般に WAAS (Wide Area Augmentation System) とも呼ばれています。 SBAS は自由に使用できますが、GPS 受信機が SBAS をサポートしている必要があります。 商用の補正サービスを使用するには通常、サブスクリプションが必要で、これらの補正信号を受信できる特定タイプの GPS 受信機を購入する必要がある場合もあります。 詳細については、「ディファレンシャル GPS について」をご参照ください。

iOS でサポートされている GPS 受信機

iOS デバイスに Bluetooth 受信機を直接接続するには、受信機が NMEA センテンスの出力をサポートするとともに、MFi プログラムの一部である必要があります。 サポートされている iOS デバイス上で AppStudio Player とともに直接使用できる受信機を次に示します。

ヒント:

GPS 受信機が使用するファームウェアのバージョンを判定するには、受信機をデバイスと接続し、デバイスの [一般] > [情報] 設定を開いて、接続した受信機の名前をタップします。

  • Bad Elf GNSS SurveyorGPS Pro+GPS Pro、および GPS for Lightning Connector

    GNSS SurveyorGPS Pro+ には、ファームウェアのバージョン 2.1.40 以降が必要です。 GPS Pro には、ファームウェアのバージョン 2.0.90 以降が必要です。 GPS for Lightning Connector には、ファームウェアのバージョン 1.0.24 以降が必要です。

  • Eos Arrow LiteArrow 100Arrow 200、および Arrow Gold - ファームウェアのバージョン 2.0.251 以降
  • Garmin GLO および GLO 2

    GLO はファームウェアのバージョン 3.00 以降、GLO 2 はファームウェアのバージョン 2.1 以降が必要です。

    Garmin GLO によって提供される精度値は、位置情報と同じ割合で更新されません。 この受信機の精度は PDOP および HDOP の値から計算され、これらは受信機の起動時に 1 回のみ出力されます。

  • Geneq SxBlue II および SxBlue III - ファームウェアのバージョン 2.0.251 以降。
  • Juniper Systems Geode
  • Leica Zeno GG04 plus - ファームウェアのバージョン 1.0.20 以降。
  • Trimble R1R2R10 Model 2R12R12iCatalyst DA2

    受信機を構成するには、Trimble Mobile Manager を使用する必要があります。 Trimble GNSS Status アプリを使用しないでください。

Android および Windows でテスト済みの GPS 受信機

AppStudio は、NMEA 0183 センテンスを出力する、Android または Windows でサポートされている受信機で動作します。 Esri は、いずれのデバイスも保証はしていませんが、次のリストは、使用されたことのあるデバイスのリストです。

注意:

これには、AppStudio で動作するすべてのデバイスが網羅されているわけではありません。

  • Bad Elf GNSS Surveyor、GPS Pro、および GPS Pro+
  • Eos Arrow Lite、Arrow 100、Arrow 200、および Arrow Gold
  • Garmin GLO¹、Garmin GLO

    Garmin GLO によって提供される精度値は、位置情報と同じ割合で更新されません。 この受信機の精度は PDOP および HDOP の値から計算され、これらは受信機の起動時に 1 回のみ出力されます。

  • Geneq SxBlue II および SxBlue III²
  • Juniper Systems Geode
  • Leica GG03¹、GG04、および Zeno 20¹
  • Trimble R1R2R8s¹、R10¹、R12¹、R12i¹ および Catalyst DA2¹

    Windows では、Trimble R1 または R2 で補正された位置を受信するには、Trimble の GNSS Status が必要です。 Android では、受信機を構成するには、Trimble Mobile Manager が必要です。

    WindowsTrimble R1 受信機の場合、AppStudio は RTX によるディファレンシャル GPS 補正にアクセスできません。 ただし、AppStudio は自律 GPS 補正による位置や、NTRIP を介して SBAS およびローカル基地局で補正された位置を識別できます。

    WindowsTrimble R2 受信機の場合、AppStudio は RTX による位置や NTRIP を介してローカル基地局で補正された位置にはアクセスできません。 AppStudio は、自律 GPS 補正および SBAS 補正された位置にのみアクセスできます。

    Trimble R10 と Samsung Galaxy S5 および S7 デバイスとのペアリングで問題が発生しています。

¹Android のみ

²Windows のみ

受信機の構成

NMEA センテンスの出力をサポートするすべての受信機が、すぐに使用できるように構成されているわけではありません。 NMEA センテンスを出力するように構成する手順については、デバイスのユーザー マニュアルをご参照ください。

受信機とデバイスの接続

AppStudio は、デバイスに統合されている受信機と、Bluetooth で接続されている外部の受信機をサポートしています。 受信機がデバイスに統合されている場合は、次の「」セクションに進みます。 外部の受信機を使用している場合は、以下の手順に従いデバイスに接続します。

  1. GPS 受信機が AppStudio と互換性があることを確認します。

    受信機は、NMEA センテンスの出力をサポートし、出力するように構成されている必要があります。 「受信機の選択」および「受信機の構成」をご参照ください。 これらの手順は、受信機を AppStudio に接続する前に完了しておく必要があります。

  2. 受信機の電源を入れ、デバイスまたはコンピューターの近くに置きます。

    Bluetooth 設定に移動し、利用可能なデバイスを表示します。 リストに受信機の名前が表示されるまで待ちます。

    ヒント:

    Bluetooth 受信機がリストに表示されない場合は、別のデバイスに接続されていないことを確認します。

    • iOS デバイスから受信機を切断するには、デバイスの Bluetooth 設定で、受信機の横にある情報ボタンをタップし、[このデバイスの登録を解除] をタップして、[デバイスの登録を解除] をタップします。
    • Android デバイスから受信機の接続を解除するには、デバイスの Bluetooth 設定で、受信機の横にある設定ボタンをタップして、[Unpair] または [Forget] をタップします。
    • Windows デバイスから受信機の接続を解除するには、デバイスの Bluetooth 設定で、受信機の名前をタップして、[デバイスの削除] をタップし、[はい] をタップします。
  3. デバイスとペアリングする受信機の名前をタップします。

GPS 受信機のサポートをアプリに追加する

高精度な受信機をアプリと統合して使用するには、まず DeviceDiscoveryAgent を使用してデバイスを検出する必要があります。 その後、DeviceListModel を使用して検出された受信機を表示できます。 受信機をアプリに接続したら、PositionSource を使用してマップ上に位置を表示したり、Position を使用して座標、精度低下率、タイム スタンプなどの位置の精度を表示することができます。 ビュー内で使用中の衛星を報告するには SatelliteInfoSource、受信した NMEA データを返すには nmeaSource および ListView を使用します。 これら各コンポーネントの詳細については、API リファレンス ガイドの「ArcGIS.AppFramework.Devices」および「ArcGIS.AppFramework.Positioning」セクションをご参照ください。

AppStudio に付属する GNSS Info サンプルは、これらのすべての機能を示しています。 このサンプルを使用するには、以下の手順を実行します。

  1. ArcGIS AppStudio を起動します。
  2. [新しいアプリ] をクリックします。
  3. [サンプル] をクリックして、[GNSS Info] サンプルまでスクロールします。
    • または、[すべてを検索] をクリックして、「GNSS Info」と入力します。
  4. [GNSS Info] サンプルを選択します。
  5. タイトルを入力します。
  6. [作成] をクリックします。

    新しく作成したアプリを実行するには、ギャラリーでアプリのサムネイルをダブルクリックします。 アプリを編集するには、ギャラリーで選択し、サイド パネルの [編集] をクリックして、Qt Creator でソース コードを起動します。

アプリのインストール ファイルを作成する場合は、アプリの設定で [高精度な位置情報][Bluetooth] ケーパビリティを有効化する必要があります。 アプリがバックグラウンドのときも位置情報の記録を続行する場合は、[バックグラウンド位置情報] も有効化します。

[高精度な位置情報]、[Bluetooth]、[バックグラウンド位置情報] ケーパビリティの有効化

アプリを Apple Store に公開している場合、アプリをホワイトリストに登録したサードパーティの外部アクセサリ (この場合は GNSS 受信機) のリストを指定する必要があります。このリストは、ArcGIS AppStudio[設定] ウィンドウの [iOS] タブで入力できます。 [外部アクセサリ プロトコル文字列] フィールドに、アプリをサポートするデバイスの文字列を入力します。 外部アクセサリ ベンダーにアプリをホワイトリストに登録してもらうには、そのベンダーに電子メールを送信し、アプリに関する次の情報を提供する必要があります。

  • アプリ名
  • バンドル ID
  • アプリのバージョン番号
  • 開発者の名前
  • 予定リリース日付
  • アプリのカテゴリ
  • アプリの説明
  • 開発者の電子メール アドレス

すると、ベンダーからアプリの設定で入力する必要がある文字列が送信されてきます。

注意:

AppStudio Player でアプリを使用している場合、アプリをホワイトリストに登録している受信機は次のとおりです。

  • Bad Elf (com.bad-elf.gps)
  • Eos (com.eos-gnss.positioningsource)

再生用に NMEA ログ ファイルを記録

現場に移動したら、NMEA ログを保存して、オフィスに戻ってからこれを再生できます。 これは、屋内で同僚にデモを行ったり、技術サポート担当者と協力して予期しない GNSS の動作の解決を図るのに役立ちます。

AppStudio Player の GNSS Discover サンプルに NMEA ファイルを保存するには、はじめに外部受信機に接続していることを確認する必要があります。 接続したら、記録を開始できます。

  • [GNSS の位置ステータス] のページに移動します。
  • [デバッグ] タブに切り替えます。
  • 記録ボタンをクリックします。

記録中も、アプリのその他の機能を使用できます。 ひととおり作業が終わったら、[デバッグ] タブに戻って記録を停止します。

記録した NMEA ログ ファイルは、ArcGIS/ArcGISAppStudioPlayer/Logs フォルダーに保存されます。

注意:

Android では、このフォルダーがアプリ固有の格納場所 Android/data/com.esri.appstudio.player/files/ArcGIS/ArcGIS AppStudioPlayer/Logs 内にあります。

AppStudio Player では、この方法で、GNSS Discover サンプル、Survey123、または QuickCapture を使用して NMEA ログを収集できます。 これらのいずれかのアプリに収集されたログは、これらのアプリのうちの他のアプリでも使用できます。