マップの準備

Navigator を使用すると、Esri が提供するナビゲーション マップを使用してアプリ内で直接ルートを作成できますが、独自の道路を独自の対象物までナビゲートすることができるカスタム ナビゲーション マップも作成できます。

ArcGIS Pro を使用し、Esri が提供するナビゲーション マップをカスタマイズするか、または組織のベースマップ、道路ネットワーク、対象物、対象物ロケーター、移動モードを使用して独自のナビゲーション マップを作成し、そのマップをモバイル作業者間で共有して、Navigator でルート案内を取得するときに使用できます。

ナビゲーション マップは、次のコンポーネントを含む MMPK (モバイル マップ パッケージ) です。

  • 交通ネットワーク - ルート検索とジオコーディング ロケーターをサポートする道路ネットワークです。
  • ベースマップ - ルート レイヤーと操作レイヤーの下に表示される背景データです。ベースマップは、圧縮してモバイル デバイスのパフォーマンスを向上させることができます。
  • ロケーター (オプション) - モバイル作業者が位置または対象物を検索できます。ロケーターは、操作レイヤーに基づいて作成するか、または住所ロケーターを作成することにより作成できます。
  • 操作レイヤー (オプション) - 組織の対象物が含まれます。たとえば、電力会社の対象物には、電力線支柱が含まれます。
  • カスタム移動モード (オプション) - 作業者は目的地への移動手段に基づいてルートを計算できます。たとえば、高さや U ターンの制限を考慮したトラック用の移動モードを作成することができます。

ナビゲーション マップに必要なすべてのコンポーネントが揃ったら、それらを ArcGIS Pro のモバイル マップ パッケージに統合します。このファイルは、ArcGIS 組織アカウントで共有でき、モバイル作業者が Navigator でこれをダウンロードして使用できます。詳細については、ArcGIS Pro ヘルプの 「モバイル マップ パッケージ」の説明をご参照ください。

ヒント:

MMPK を作成する各手順を習得する演習を参考にする場合は、完全な例について、「演習」セクションをご参照ください。

要件

ArcGIS Navigator で使用するカスタム ナビゲーション マップを作成するには、次の製品とライセンスが必要です。

  • ArcGIS Pro 1.2 以降 (推奨、このトピックの参照先: ArcGIS Pro 2.3)
    • 組織の対象物、ロケーター、および道路のカスタム ナビゲーション マップを作成するには、ArcGIS Pro 1.2 以降が必要です。
    • 移動モードを作成して、フィーチャ編集テンプレートを使用するには、ArcGIS Pro 1.4 以降が必要です。
    • [共有] タブを通じて MMPK を共有する (1 回の手順でパッケージ化と共有が実現されます) には、ArcGIS Pro 2.2 以降が必要です。ArcGIS Pro の旧バージョンでは、[モバイル マップ パッケージの作成 (Create Mobile Map Package)][パッケージの共有 (Share Package)] ツールで、MMPK を作成して共有することができます。
  • 次のライセンスを持つ ArcGIS の組織アカウント:
  • (オプション) ArcGIS StreetMap Premium データセットで使用するライセンス - MMPK の StreetMap Premium 道路を追加するために必要です。
    メモ:

    詳細については、「ArcGIS Pro での StreetMap Premium の基本操作」をご参照ください。

  • (オプション) StreetMap Premium Custom Roads データセットで使用するライセンス - MMPK の StreetMap Premium 道路と独自の道路を追加するために必要です。
  • (オプションおよび推奨) ArcGIS Navigator をインストールしたモバイル デバイス - MMPK をテストします。

ArcGIS 組織サイト管理者は、ArcGIS 組織アカウントのライセンスを構成します。

メモ:

ArcGIS の組織アカウントを持っていない場合、無料のトライアルにサイン アップします。

ArcGIS Online の組織のメンバーで、ArcGIS Navigator トライアル ライセンスを追加する必要がある場合は、無料トライアルをリクエストしてください。

ArcGIS Pro でのプロジェクトの設定

モバイル マップ パッケージを作成するには、ArcGIS Pro でプロジェクトを作成する必要があります。作成後のプロジェクトへのデータの追加方法は、使用目的により異なります。

道路の StreetMap Premium への接続

StreetMap Premium に含まれていない道路 (組織の私道など) のルートを検索する必要があって、独自の交通ネットワークがない場合は、StreetMap Premium Custom Roads データセットを使用します。使用する道路を StreetMap Premium ネットワーク データセットのコピーに作成するか、ロードします。使用する道路を作成またはロードしたら、新しい道路ネットワークを構築してテストする必要があります。

注意:

道路を Navigator で使用するために StreetMap Premium Custom Roads に作成またはロードするときは、次に説明するワークフローに従う必要があります。詳細な手順については、「道路の作成」または「道路のロード」の演習をご参照ください。追加ドキュメントについては、「StreetMap Premium Custom Roads」をご参照ください。

ライセンス:

道路を作成するかロードする場合は、StreetMap Premium Custom Roads のライセンスとデータが必要です。

道路の作成

まだ道路がファイル ジオデータベース フィーチャクラスになっていない場合は、次のようにデジタイズして StreetMap Premium Custom Roads データセットにアタッチします。

  • プロジェクト ファイルを開いて、ArcGIS ProStreetMap Premium Custom Roads を表示します。詳しい手順は、データと一緒にパッケージ化されている Readme.txt ファイルで参照できます。
  • デジタイズするときの参照として使用する操作レイヤーがある場合は、それらをプロジェクトの [Add Custom Streets] マップ タブに追加します。
    メモ:

    そのレイヤーを Navigator のマップに表示する場合は、[Navigation with Custom Streets] マップ タブにも追加する必要があります。「レイヤーの追加とカスタマイズ」をご参照ください。

  • デジタイズするときに道路を正確に配置するには、デジタイズする必要があるエリアをマップで拡大します。
    ヒント:

    よく使用するズーム レベルに簡単に戻れるように、操作するエリアのブックマークを作成します。

  • スナップを有効にして、ポイント、端点、頂点、およびエッジが有効になっていることを確認します。
  • [Custom Streets] フィーチャ編集テンプレートの使用による道路の接続の容易化 - テンプレートは、ネットワーク データセット ルールに基づいて自動的に道路の接続に必要なフィーチャ ジオメトリを作成します。道路名および追加する道路が舗装されているかどうかを指定します。
    ヒント:

    フィーチャ属性テーブルで、ルートの計算方法を決定する他のオプションの属性を追加できます。設定可能な属性の詳細については、「ネットワーク属性」をご参照ください。フィーチャ属性テーブルでの編集については、「新しいフィーチャの属性の入力」をご参照ください。

  • 道路のデジタイズ 各道路は、デジタイズしている道路が [Routing Streets] レイヤーの道路と交差するポイントをクリックして開始します。各道路は、最後の頂点を右クリックし、[完了] をクリックして選択を解除し、終了します。
    メモ:

    道路ネットワーク接続の詳細については、「接続性について」と「StreetMap Premium Custom Roads」のコピーのドキュメントをご参照ください。

詳細な手順については、「対象物の追加と道路のデジタイズ」をご参照ください。

道路の読み込み

道路がすでにファイル ジオデータベース フィーチャクラスに含まれている場合は、次のように道路を StreetMap Premium Custom Roads データセットにアタッチできます。

  • プロジェクト ファイルを開いて、ArcGIS ProStreetMap Premium Custom Roads を表示します。詳しい手順は、データと一緒にパッケージ化されている Readme.txt ファイルで参照できます。
  • 参照として使用する操作レイヤーがある場合は、それらをプロジェクトの [Add Custom Streets] マップ タブに追加します。
    メモ:

    そのレイヤーを Navigator のマップに表示する場合は、[Navigation with Custom Streets] マップ タブにも追加する必要があります。「レイヤーの追加とカスタマイズ」をご参照ください。

  • [アペンド (Append)] ツールを使用して、道路データを [Custom Streets] フィーチャクラスにロードします。
    ヒント:

    道路ネットワーク スキーマが StreetMap Premium Custom Roads スキーマと一致しないときは、[スキーマ タイプ][フィールド マップを使用してスキーマの違いをリコンサイル] に設定します。

詳細な手順については、「対象物の追加と道路の読み込み」をご参照ください。

新しい道路ネットワークの構築とテスト

ここで作成またはロードしたカスタム道路は、まだ StreetMap Premium Custom Roads ネットワーク データセットのコピーの一部ではありません。これらは、[Routing_ND] ネットワーク データセットを再構築するまでは、ルートに使用されません。再建してから新しいネットワークをテストして、道路の接続性やルート検索の問題を特定し、これに対処します。

  • [ネットワークの構築 (Build Network)] ツールを使用して、[Routing_ND] ネットワーク データセットを再構築します。
  • 新しい道路ネットワークのテスト - ストップを StreetMap Premium 道路と作成またはロードした道路を含むルートに追加して、ルート案内を生成します。
    ヒント:

    ルートが生成されなかった場合、もう一度道路ネットワークを構築してください。

道路を StreetMap Premium Custom Roads データセットに接続する場合、次にリスト表示される問題が発生する場合があります。問題を解決する方法の詳細な手順については、「道路データの問題の調査と解決」の例をご参照ください。

  • 道路の未接続 - 交差する道路が接続されていません。
  • 交差している道路の未接続 - 交差している道路が接続されていません。
  • カスタム道路の未接続 - カスタム道路は、カスタム道路オーバーライド ポイントで接続する必要があります。
  • カスタム道路と交差する StreetMap Premium 道路の未接続 - カスタム道路は、カスタム道路オーバーライド ポイントで StreetMap Premium 道路に接続する必要があります。
  • 重複する道路 - 道路がすでに Routing Streets フィーチャクラスに含まれている場合、その道路を Custom Streets フィーチャクラスから削除する必要があります。
メモ:

MMPK をパッケージ化する前に、作成したルートレイヤーを削除して、道路ネットワークをテストします。

レイヤーの追加とカスタマイズ

モバイル作業者は、MMPK で対象物を参照する場合があります。対象物を含む操作レイヤーを追加して、モバイル作業者の対象物の表示、検索、およびルート検索を可能にします。追加して、レイヤーをモバイル作業者のためにカスタマイズします。たとえば、次の操作を実行できます。

  • シンボルとレイヤーのカスタマイズ - モバイル作業者が簡単に対象物を確認して特定できるようにすることで、正しい対象物へのルートを検索できます。たとえば、次の操作を実行できます。
    • わかりやすくて見慣れたシンボルを選択します。
    • モバイル デバイスで見やすいシンボル サイズにします (10 pt がほとんどのモバイルデバイスの適切なサイズです)。
    • ベースマップの上のラベルを読みやすくします (11 のラベル サイズと 1 pt の白ハローを推奨します)。
    詳細な手順については、「マップのシンボルとラベルのカスタマイズ」をご参照ください。
  • ポップアップの構成 - Navigator で対象物をタップしたときに、モバイル作業者に必要な情報を表示します。詳細については、「ポップアップのカスタマイズ」をご参照ください。
    メモ:

    フィーチャにポップアップがない場合、ユーザーはマップ上でポップアップを利用することはできません。

ヒント:

マップの座標系は、追加する最初のレイヤーの座標系で決定されます。マップに適切な座標系を選択するには、マップのオプションで設定します。

検索の有効化

モバイル作業者は、正しいルートを検索するために、または作業で必要な情報を取得するために、対象物や、住所、交点を検索する必要があります。Navigator で使用可能な検索は、MMPK で設定して、次のようにカスタマイズできます。

  • 対象物の検索の有効化 - MMPK に対象物が含まれている場合は、モバイル作業者がより簡単に検索できるように、特定のフィールドによる対象物の検索を可能にします。対象物を検索可能にするには、次の 2 つの方法があります。詳細な手順については、「対象物の検索の有効化」をご参照ください。
  • ArcGIS Pro プロジェクトのロケーターを含めることにより、住所または交点の検索を有効にします。

    これは、Esri が提供するナビゲーション マップまたは StreetMap Premium データセットに含まれていた汎用の住所ロケーターであったり、作成した独自の住所ロケーターであったりします。

  • レイヤーまたはロケーターが、プロジェクトに正しく追加されていることを確認してください。
    • レイヤーの場合は、プロジェクトのロケーター プロバイダーのリストに表示されている必要があります。またレイヤーは、この場所で有効にして構成します。
    • 汎用の住所ロケーターまたはカスタム住所ロケーターの場合は、プロジェクトの [ロケーター] フォルダーに表示されている必要があります。これらの順序は、ロケーター プロバイダーのリストで構成できます。
  • ロケーター プロバイダーのリストを整理して、検索結果を表示させる順序を反映させます。
  • 検索をテストして、想定される対象物、住所、および交点が返されることを確認します。マップは、選択した検索結果をズームして詳細が表示されます。

カスタム移動モードの追加

移動モードは、作成可能な移動とルートの制限を提供します。移動モードは、特定の MMPK に関連付けられて、運転手が Navigator で選択できます。StreetMap Premium および Esri が提供するナビゲーション マップには、デフォルトの移動モードが含まれています。また、カスタム移動モードを追加して、運転手と車両に適合させることができます。説明を入力して、交通の適切なタイプを選択します。ニーズおよびネットワーク データセットの属性に基づいて、コスト、規制、U ターンの設定や、その他の高度な設定を構成します。詳細な手順については、「カスタム移動モードの作成」をご参照ください。

ヒント:

作成した移動モードを Navigator の MMPK のデフォルトで運転手に使用してもらうには、移動モード設定でカスタム移動モードをデフォルト移動モードとして設定します。

StreetMap Premium データセットを使用している場合は、[距離コスト] の単位をマイルからキロメートルに変更します。StreetMap Premium パラメーターは、すべてメートル法になっていて、距離コストの単位を一致させる必要があります。

移動モードを作成したら、ArcGIS Pro でテストします。[ルート レイヤー (route layer)] を作成して、移動モードを設定したときに選択した制限をテストするルートにストップを追加し、[ルート] タブで新しい移動モードが選択されていることを確認します。カスタム移動モードで指定する車両の高さ制限よりも低い高架橋の両側にストップを配置します。ルートの解析を実行します。カスタム移動モードの結果を、デフォルト移動モードの 1 つの結果と比較して、適切なルート検索の動作になることを確認します。詳細な手順については、「移動モードのテスト」をご参照ください。

メモ:

作成したルート レイヤーは、テストの後で誤って MMPK にそれらのパッケージを作成することがないように、すべて削除します。

MMPK のパッケージ化と共有

ArcGIS Pro プロジェクトのナビゲーション マップ コンポーネントをすべてモバイル マップ パッケージに統合し、モバイル作業者と共有します。「モバイル マップ パッケージの共有」をご参照になって、次の点に留意してください。

  • アカウントにパッケージを保存し、Navigator を使用してモバイル作業者が使用できるようにします。
  • 適切なマップ範囲にズームして、現在の表示範囲のデータをパッケージに追加します。クリップして一部分が範囲の外側になるフィーチャ (長い道路など) がパッケージに含まれるマップ範囲内の部分のみになることを確認します。
  • 住所ロケーターを含めるかどうかを指示して、含める場合はメニューから選択するか、その場所を参照します。
  • ポータル コンテンツの MMPK を格納する場所を指定して、組織または特定のグループと共有します。
  • MMPK を共有する必要があるユーザーを指定します。
    ヒント:

    組織内の特定のグループ間でパッケージを共有する場合、モバイル作業者がそのグループに属していることを確認します。

  • MMPK を分析し、パッケージの問題を見つけて解決します。
メモ:

[モバイル マップのパッケージ化] ツールを実行するときは、少し時間がかかる場合があります。

パッケージを作成して共有すると、モバイル作業者は Navigator にサイン インしてから、パッケージを検索して自分のデバイスにダウンロードし、ナビゲーションを開始できます。

ヒント:

複数の類似したモバイル マップ パッケージを作成する必要がある場合は、[モバイル マップ パッケージの作成 (Create Mobile Map Package)][パッケージの共有 (Share Package)] ツールを使用して、Python でプロセスを自動化します。

詳細な手順については、「データのパッケージ化と共有」をご参照ください。

Navigator でのマップのテスト

現場での使用に備えて MMPK を配布する前に、MMPK を Navigator にダウンロードして開き、想定どおりに動作することを確認します。モバイル デバイスの画面で動作する機能は映り込みや照明の影響を受けるため、オフィスだけでなく屋外でもテストするようにします。以下に注意してください。

  • ルート検索が正常で、何らかの道路を含めた場合は、その道路のルート検索を含めて、想定されるルートを返します。
  • 対象物は、はっきりしていて、わかりやすく、情報を与えてくれるシンボルとラベルで、想定どおりに表示されます。
  • 対象物、住所、および交点の検索により、想定される結果が返されます。
  • 正しいデフォルトの移動モードが、ルートに使用されます。
  • カスタム移動モードのルート検索は、カスタム移動モードの制限を順守するルートを生成します。

詳細な手順については、「Navigator でのマップのテスト」をご参照ください。

制限事項

Navigator のナビゲーション マップには次の制限があります。

  • マップ サービスまたはラスター ファイルで構成されたベースマップはサポートされていません。これには、ArcGIS Online を通じて Esri が提供するベースマップも含まれます。