ダルシー フロー (Darcy Flow) およびダルシー流速 (Darcy Velocity) の仕組み

Spatial Analyst のライセンスで利用可能。

[ダルシー フロー (Darcy Flow)] および [ダルシー流速 (Darcy Velocity)] ツールは、[粒子追跡 (Particle Track)] および [多孔質媒体内の分散 (Porous Puff)] ツールと併せて、地下水成分の基本的な移流拡散モデリングを実行するために使用できます。 この方法は、水頭が深さと無関係な、2 次元の、垂直方向に混合される水平な定常流動をモデル化します。

ダルシー フロー計算

以下のセクションでは、ダルシー フローの計算で使用される方程式について詳細に説明します。

フローおよび流速の計算

  • ダルシーの法則によれば、多孔質媒内のダルシー流速 q は、水力学的伝導率 K および水頭勾配 水頭勾配 (等方性帯水層内のフローの方向での単位長さ当たりの水頭の変化) から次のように計算されます。

    • q = -K 水頭勾配

      ここで、K は、透水率 T および厚さ b から、K = T/b のように計算することができます。

    この q は、体積/時間/面積の単位を持ち、比流量、体積流束、またはろ過速度とも呼ばれます。 Bear (1979) の文献は、この q を、フローの方向に垂直な単位断面積を単位時間当たりに流れる水の体積として定義しています。

  • この体積流束に密接に関連する帯水層流束 U は、帯水層の単位幅当たりの流出量です (体積/時間/長さの単位を持つ)。

    • U = -T 水頭勾配

    この構造では、フローが水平になるように、水頭が深さと無関係であると仮定します。

  • 間隙内の平均流束 (浸透速度 V と呼ばれる) は、ダルシー流速を媒体の有効間隙率で割った値になります。

    • 浸透速度 (V) の式
  • [ダルシー フロー (Darcy Flow)] の実装では、この浸透速度 V がセルごとに計算されます。 セル j,j について、セルの 4 つの壁の各々を通る帯水層流束 U は、等方性であると仮定して、2 つの隣接するセルの間の水頭の差および透水率の調和平均 Ti+1/2,j を使用して計算されます (Konikow and Bredehoeft, 1978)。

    たとえば、水頭勾配x 成分の場合、セル i,j とセル i+1,j の間の方程式は次のようになります。

    • δh/δx ≈ (hi+1 - hi) / Δx
  • 次の図をご参照ください。

    セルごとに計算される浸透速度 (V) の図

残留量の計算

それに続くセルの壁の計算では、セル i,j とセル i+1,j の間の帯水層流束が、x 方向と平行に流れ、次のように計算されます。

  • x 方向と平行に流れる帯水層流束の式

地下水量収支を決定するには、セルの壁を通る地下水の流出量を計算する必要があります。 流出量 Qx(i+1/2) は、帯水層流束 U およびセルの壁の幅 Δy から次のように計算されます。

  • Qx(i+1/2,j) = Ux(i+1/2,j) Δy

セルの 4 つの壁すべてについて、同様の値を取得します。 これらの値を使用して、出力ラスターに書き込まれるセルの地下水量収支残余 Rvol を計算します。 この値は、セル内への正味のフローを仮定して、各セル内の水の余剰 (または負数の場合、不足) を表し、次のように計算されます。

  • 地下水量収支残余 Rvol の式

この残余 Rvol は、理想的にはすべてのセルでゼロになる必要があります。 残余を含んでいる出力ラスターを調べる場合、ゼロからのずれを探します。 大きい正または負の残余は、質量の生成または損失を示します。これは連続性の原則に違反し、一貫性のない水頭および透水率のデータを示唆します。 正または負の残余の一貫性のあるパターンは、識別されていないソースまたはシンクが存在することを示唆します。 モデル化を進める前に、残余を減らします。 通常は、透水率フィールドに対して、残余を減らすための調整が行われます。

フロー ベクトルの計算

セルごとのフロー ベクトルを計算するために [ダルシー フロー (Darcy Flow)] で使用される実際の方程式は、Ux(i-1/2,j) および Ux(i+1/2,j) の算術平均を、中心セルの間隙率 ni,j および厚さ bi,j で割って、中心での浸透速度 Vx の値を得ることによって簡略化されます。

  • 浸透速度 Vx の式

また、同様の方程式を使用して、中心での Vy を計算します。

  • 浸透速度 Vy の式

この中心化は、格納された値がセルの中心での値を表すという慣例に従うために行われます。 これらの値は、方向と強度の出力ラスターに格納するために、地理座標での方向と強度に変換されます。

情報が不完全になるラスターの境界セルの場合、速度の値は単に最近隣の内側のセルからコピーされます。

間隙率の値

以下の表は、さまざまな地質媒体について、間隙率および水力学的伝導率の値をまとめています。

表 1: 未固結媒体の水力学的伝導率

K (m/s)

粗い砂利

10-1 - 10-2

砂および砂利

10-1 - 10-5

細砂、沈泥、黄土

10-5 - 10-9

粘土、頁岩、氷礫土

10-9 - 10-13

固結媒体の水力学的伝導率、Marsily (1986)。

表 2: 固結媒体の水力学的伝導率

K (m/s)

ドロマイト質石灰石

10-3 - 10-5

風化石灰岩

10-3 - 10-5

未風化石灰岩

10-6 - 10-9

石灰石

10-5 - 10-9

砂岩

10-4 - 10-10

花こう岩、片麻岩、圧密玄武岩

10-9 - 10-13

固結媒体の水力学的伝導率、Marsily (1986)。

表 3: 地質媒体の間隙率

全間隙率

未変質の花こう岩および片麻岩

0.0002 ~ 0.018

珪岩

0.008

頁岩、粘板岩、雲母片岩

0.005 ~ 0.075

石灰石、一次ドロマイト

0.005 ~ 0.125

二次ドロマイト

0.10 ~ 0.30

石灰岩

0.08 ~ 0.37

砂岩

0.035 ~ 0.38

火山性凝灰岩

0.30 ~ 0.40

0.15 ~ 0.48

粘土

0.44 ~ 0.53

膨潤粘土、沈泥

最大 0.90

耕地土壌

0.45 ~ 0.65

地質媒体の間隙率、Marsily (1986)。

間隙率および水力学的伝導率のその他の値の一覧が、Freeze and Cherry (1979) の文献に記載されています。 Gelhar et al. (1992) の文献では、さまざまな地層の間隙率および透水率の要約が報告されています。 Blatt et al. (1980) の文献には、堆積物質内の間隙率の詳細な考察が記載されています。 これらの機能を用いる移流分散のモデル化に関する詳細な考察が、Tauxe (1994) の文献に記載されています。

一般的に、地下水分散モデリングにおいては、[ダルシー フロー (Darcy Flow)] ツール、[粒子追跡 (Particle Track)] ツール、[多孔質媒体内の分散 (Porous Puff)] ツールの順に実行します。

  • [ダルシー フロー (Darcy Flow)] ツールのダイアログ ボックスで行う設定の例は次のとおりです。

    入力地下水水頭 (groundwater head raster) ラスター: head

    入力有効地層間隙率 (effective formation porosity) ラスター: poros

    入力飽和帯水層厚 (saturated thickness) ラスター: thickn

    入力地層透水率 (formation transmissivity) ラスター: transm

    出力地下水量収支 (groundwater volume balance) ラスター: resid1

    出力方向ラスター: dir1

    出力マグニチュード ラスター: mag1

  • [ダルシー流速 (Darcy Velocity)] ツールのダイアログ ボックスで行う設定の例は次のとおりです。

    入力地下水水頭 (groundwater head raster) ラスター: head

    入力有効地層間隙率 (effective formation porosity) ラスター: poros

    入力飽和帯水層厚 (saturated thickness) ラスター: thickn

    入力地層透水率 (formation transmissivity) ラスター: transm

    出力方向ラスター: dir1

    出力マグニチュード ラスター: mag1

参考文献

Bear, J. Hydraulics of Groundwater. McGraw-Hill. 1979

Blatt, H., G. Middleton, and R. Murray. Origin of Sedimentary Rocks, 2nd Ed. Prentice-Hall. 1980

Freeze, R. A., and J. A. Cherry. Groundwater. Prentice-Hall. 1979

Gelhar, L. W., C. Welty, and K. R. Rehfeldt. "A Critical Review of Data on Field-Scale Dispersion in Aquifers". Water Resources Research, 28 no. 7: 1955-1974. 1992.

Konikow, L. F. and J. D. Bredehoeft. "Computer Model of Two-Dimensional Solute Transport and Dispersion in Ground Water", USGS Techniques of Water Resources Investigations, Book 7, Chap. C2, U.S. Geological Survey, Washington, D.C. 1978.

Marsily, G. de. Quantitative Hydrogeology. Academic Press. 1986.

Tauxe, J. D. "Porous Medium Advection-Dispersion Modeling in a Geographic Information System". Doctoral Dissertation in Civil Engineering. The University of Texas at Austin, 1994.

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