サブモデルの使用

サブモデルを使用することで、さらに複雑で現実的なモデルを作成できます。 サブモデルから構成される Suitability Modeler モデルは、複数のモデルから成るモデルと考えることができます。

サブモデルの使用

設置区域や保護区域として最適な場所を特定する場合、通常は、適合性モデルの主体は、個々の条件間のトレードオフだけでなく、競合する目標間でもトレードオフを行います。 各目標をそれぞれ異なるサブモデルに取り込むことができます。

たとえば、クロクマの保護区域を特定する適合性モデルについて考えます。 クマの目線で、生息地、食糧調達、安全性の 3 つの主たる目標間でトレードオフを行うことで最適な区域が選択されます。 これらの各目標で、クマはその目標に影響する条件間のトレードオフを行います。 たとえば、安全性目標の条件としては、道路や建物から遠く離れていることだけでなく、森や保護区に近いことが優先されます。

サブモデルを作成する際には、そのサブモデルの目標に注目します。 条件を決定、変換、重み付けする際には、その目標を基準にして最適なエリアを特定する必要があります。 サブモデルを結合すると、目標間でトレードオフが行われます。

同じ条件を複数の異なるサブモデルで使用でき、その意味はサブモデルによって異なる場合があります。 たとえば、新しいスキー リゾートの場所を特定する適合性モデルは、雪の状態が最も理想的なエリアを特定するサブモデル、最適な地形を見つけるサブモデル、建設費用が最も安くなる場所を特定するサブモデルから構成されることがあります。 建設費用サブモデルでは斜面が緩やかなことが優先されます。 これに対し、地形サブモデルでは、急斜面など、バラエティー豊かなゲレンデにすることが優先されます。 サブモデルの具体的な目標を取り込むため、各サブモデルに傾斜角を追加して適宜変換します。

1 つの適合性モデルで 20 個以上の条件を処理するのは困難です。 サブモデルを使用することで、複雑なモデルを小さな論理コンポーネントに分割して整理することができます。

サブモデルを使用したクマ モデルの作成

以降の各セクションでは、クマの保護区域として最適なエリアを特定する適合性モデルの作成を例にして説明します。 このモデルは、生息地、食糧資源、安全性の 3 つのサブモデルから構成されます。 この 3 つのサブモデルを結合して最終適合性マップを作成します。 この適合性マップから、保護区域として最適な場所を特定します。

生息地サブモデル

生息地サブモデルは、クマが生息するのに最適な物理的および非生物的条件を特定します。

概念上、サブモデルを作成する手順は、適合性モデルを作成する手順と同じです。

  1. クマが好む条件を特定します。 このサブモデルでは、最適な物理的および非生物的条件を特定する条件を入力します。
  2. 各条件を共通の適合性スケールで変換します。
  3. 条件を相互に相対的に重み付けします。
  4. 変換され、重み付けされた条件を結合します。

サブモデルを作成する際には、適合性モデリング ワークフローの場所検索ステップを実行しないでください。 サブモデルを結合した後で、保護区域として最適な区画を特定する際に、場所検索ステップを実行します。

生息地適合性マップを作成するサブモデル
生息地適合性マップを作成する生息地サブモデルを示します。

生息地サブモデルでは、3 つの条件を変換、重み付け、結合して生息地適合性マップが作成されます。 生息地適合性マップには、クマが生息する物理的な条件を基準にして、各場所の相対的な優先度が示されます。 緑色が濃いエリアほど優先度が高くなります。

食糧サブモデル

食糧サブモデルは、クマが食糧を見つける確率が最も高いエリアを特定します。

食糧適合性マップを作成するサブモデル
食糧適合性マップを作成する食糧サブモデルを示します。

食糧適合性マップには、各場所での、クマが食糧を見つける相対的な確率が示されます。 緑色が濃いエリアほど、食糧がある確率が高くなります。 これらのエリアは森の中にあり、湿地帯や冬に鹿が集まる場所の近くにあります。

安全性サブモデル

安全性サブモデルは、クマにとって最も安全なエリアを特定します。

安全性適合性マップを作成するサブモデル
安全性適合性マップを作成する安全性サブモデルを示します。

安全性適合性マップには、クマにとっての各場所の相対的な安全性が示されます。 最も安全なエリアは、道路や家屋から離れた、標高の高い、険しい斜面にあります。

サブモデルから構成されるモデル

各サブモデルから作成された適合性マップでは、そのサブモデルの目標に関して各場所の相対的な優先度がランク付けされます。 生息地サブモデルから作成された適合性マップには、クマが生息するのに最も好ましいエリアが示され、食糧サブモデルは食糧が最も豊富にある場所を特定し、安全性サブモデルは最も安全なエリアを特定します。

各サブモデルからの最終適合性マップを結合して 4 つ目の適合性モデルを作成します。

生息地サブモデル、食糧サブモデル、安全性サブモデルを結合して最終適合性マップと場所検索マップを作成
サブモデルを 4 つ目の適合性モデルに結合して最終適合性マップを作成します。

サブモデルを重み付けし、結合して最終適合性マップを作成します。 最終適合性マップには、生息し、食糧を見つけ、安全性を確保するのに最適なエリアをトレードオフしながら、各場所の優先度が示されます。

クマを保護する実際の区画を特定するには、場所検索ステップを適用します。 各場所での属性の優先度に加え、これらの各属性についてクマが必要とする空間的要件もあります。 これには、クマが必要とする面積、必要な区画の数、区画の形状、区画同士の間隔などがあります。 これらの要件を満たす最適なエリアが適合性マップから特定されます。

Suitability Modeler でのサブモデル

Suitability Modeler でサブモデルを入力として使用してモデルを作成することと、条件を操作することはよく似ています。 主な違いとして、入力サブモデルはすでに共通の適合性スケールになっているため、入力サブモデルを変換する必要はありません。

入力サブモデルを作成する場合、同じ適合性スケールと重み付け方法 (乗数または割合) を使用します。

入力サブモデルは条件の数がそれぞれ異なる場合があります。 重み付け方法として乗数が適用されたサブモデルを結合すると、条件の数が最も多いサブモデルから作成された適合性マップの方が、通常は範囲が広くなるため、一般的に影響力が高くなります。 入力サブモデルの重み付けを調整して、それぞれが最終適合性マップに望ましい方法で影響するようにします。

入力サブモデルを変換する必要はないため、適合性 タブのサブモデル テーブル内のサブモデルの横に、変換ウィンドウを開くための円形コントロールは表示されません。

条件の場合と同様に、サブモデルから構成されたモデルをサーバー上で実行するには、各サブモデルから作成された入力適合性マップは Web イメージ レイヤーでなければなりません。 Web イメージ レイヤーを生成するには、各サブモデルを作成しているときに、適合性マップが最大解像度で実行されている状態で [Web イメージ レイヤー] オプションをクリックします。 ローカル データを参照するサブモデルから作成された適合性マップがある場合、[ソース] タブを使用してこれらの Web イメージ レイヤーを作成できます。

サブモデルを効率的に操作するには、すべてのサブモデルを同じ Suitability Modeler コンテナー (.sam) 内に作成します。 各サブモデルからの出力適合性マップに、わかりやすい、意味のある名前を付けることをお勧めします。 ただし、マップの名前を変更しなかった場合、Suitability Modeler によって一意の名前が割り当てられます。

適合性モデラー コンテナーに格納されているサブモデル
クマ モデルを管理するため、生息地サブモデル、食糧サブモデル、安全性サブモデル、各サブモデルから成るモデルが適合性モデラー コンテナーに格納されています。

サブモデルが作成されたら、新しい適合性モデルを開いて各サブモデルを結合します。 [適合性] タブの [サブモデル] ドロップダウン リストで、各サブモデルから作成された適合性マップを選択できます。

サブモデルの作成

サブモデルからの出力適合性マップを入力として使用するモデルを作成するには、次の手順を実行します。

  1. 各サブモデルの Suitability Modeler モデルを作成します。
  2. [適合性] タブの参照ボタン データの追加 を使用して、サブモデルから作成された適合性マップをサブモデルから構成されるモデルに追加する場合、[適合性] タブの [実行] をクリックすることで、最大解像度で実行する必要があります。

  3. 次のいずれかの操作を行うことで、新しい Suitability Modeler モデルを開きます。
    • Suitability Modeler が開いていない場合、[解析] リボンの [ワークフロー] グループで、[適合性モデラー] ボタンをクリックします。
    • Suitability Modeler が開いている場合、[適合性モデラー] リボンの [適合性モデル] グループで、[新規モデル] ボタンをクリックします。
  4. [設定] タブで、モデルの名前を指定します。 [モデル入力タイプ] ドロップダウン メニューで、[サブモデル] を選択します。
  5. [適合性] タブで、次のいずれかの操作を行うことで、手順 1 の各サブモデルに作成された最終適合性マップを入力します。
    • [適合性モデラー] リボンの [条件の追加] ボタン 条件の追加 をクリックします。
    • [適合性] タブの [ラスター サブモデル データセットを参照して追加] ボタン ラスター サブモデル データセットを参照して追加 をクリックします。
    • [適合性] タブの [コンテンツ リストからラスター サブモデルをレイヤーとして追加] ボタン コンテンツ リストからラスター サブモデルをレイヤーとして追加 をクリックします。
    • [コンテンツ] ウィンドウから、レイヤーを適合性グループ レイヤーにドラッグします。
    • 適合性グループ レイヤーを右クリックして、[データの追加] データの追加 をクリックします。
  6. レイヤーまたはデータセットのコピーが作成され、サブモデルから構成されるモデルに入力されます。 サブモデルで行われた変更は、サブモデルから構成されるモデルには反映されません。

  7. [適合性] タブの [サブモデル] テーブルで、サブモデルを相互に相対的に重み付けします。
  8. [適合性] タブで、[実行] をクリックして、最大解像度の適合性マップを作成します。
  9. [場所検索] タブで空間要件を指定し、[実行] をクリックして場所検索マップを作成します。

手順 6 で作成された適合性マップでは、各サブモデルのさまざまな目標をトレードオフしながら、各場所の相対的な優先度がランク付けされます。 手順 7 で作成された場所検索マップには、目標をトレードオフして主体の空間要件を考慮しながら、最適な場所が示されます。

モデル入力タイプの設定変更の影響

[設定] タブで [モデル入力タイプ] として [条件] が指定されている場合に [サブモデル] に変更すると、次のようになります。

  • 指定したすべての条件が、モデルに新たに入力されたかのように、入力サブモデルとして扱われます。
  • いずれかの条件が変換されていた場合、変換済みレイヤーが適合性グループ レイヤーから削除されます。
  • 各サブモデルにその重み付けの値を掛け合わせて結合することで、適合性マップが更新されます。

[設定] タブで [モデル入力タイプ] として [サブモデル] が指定されている場合に [条件] に変更すると、次のようになります。

  • 指定したすべてのサブモデルが、モデルに新たに入力されたかのように、入力条件として扱われます。
  • 入力条件を使用するモデルの場合と同様に、各条件を変換してから、モデルの作成に進む必要があります。