関数によるリスケール (Rescale by Function) の出力値の上限および下限閾値の相互作用

[関数によるリスケール (Rescale by Function)] ツールでは、指定された下限および上限閾値の間 (およびそれらを含む) の入力値に変換関数が適用されます。 下限および上限閾値を入力ラスター値に相対してどのように設定するかによって、結果は非常に異なる可能性があります。 入力値に下限および上限閾値を指定する場合は、3 つの一般的な使用ケースがあります。

  1. 下限および上限閾値が、最小および最大入力値に等しい (データ依存)。

    一般的な使用例: データセット内のシカのセルの相対的な適合性を特定する。

  2. 下限閾値が最小入力値より大きいか、上限閾値が最大入力値より小さい (閾値はデータ内に含まれている)。

    一般的な使用例: シカが生息できない場所の値を含む、データセット内のシカのセルの相対的な適合性を特定する。

  3. 下限閾値が最小入力値より小さいか、上限閾値が最大入力値より大きい (データ非依存)。

    一般的な使用例: 分析範囲内外に生息するシカのより大きな個体群と比較して、データセット内のシカのセルの相対的な適合性を特定する。

下限および上限閾値の適用シナリオ

以下の表は、上記の 3 つの一般的な使用ケースを、単調 (連続的な増加または減少) 変換関数または非単調 (関数内に複数のピーク) 変換関数に適用する、5 つのシナリオをまとめたものです。 最初の 4 つのシナリオでは、評価スケールを増やしながらデフォルトのパラメーター値が使用されます。 シナリオ 5 では、特定の形状制御パラメーターと閾値が定義されます。

シナリオ結果

単調

(例では Power 関数を使用)

1) 下限閾値と上限閾値は、入力ラスターの最小値と最大値に設定されている。

最小入力値は [起点スケール] の値に、最大入力値は [終点スケール] の値に割り当てられ、他の入力値はすべて閾値間の適切な評価値に割り当てられます。

2) 下限閾値と上限閾値は、入力ラスターの値の範囲に収まっている。

[最小閾値] に対応する入力値は、[起点スケール] に割り当てられます。 [最大閾値] に対応する入力値は [終点スケール] に割り当てられ、他の入力値はすべて閾値間の適切な評価値に割り当てられます。 [最小閾値] を下回る入力値は [最小閾値に満たない場合の出力スケール] に設定され、[最大閾値] を上回る入力値は [最大閾値を超える場合の出力スケール] に設定されます。

3) 下限閾値が入力ラスターの最小値より小さいか、上限閾値が最大入力値より大きい。

[最小閾値][起点スケール] の値に、[最大閾値][終点スケール] の値に割り当てられ、他の値はすべて閾値間の適切な評価値に割り当てられます。 すべての値は最小閾値を上回るか最大閾値を下回るので、出力ラスターには、起点スケールおよび終点スケールの評価値と等しい出力値がない可能性があります。

非単調

(例ではガウス関数を使用)

4) 下限閾値およびおよび上限閾値は、入力ラスターの最小値と最大値に設定されている。

最小および最大入力値は [起点スケール] の値に、中点は [終点スケール] の値に割り当てられ、他の入力値はすべて閾値間の適切な評価値に割り当てられます。

5) 下限閾値および上限閾値は、関数曲線の片側に設定されている。

[最小閾値] に対応する入力値は、[終点スケール] に割り当てられます。 [最大閾値] に対応する入力値は [起点スケール] に割り当てられ、閾値間の他の入力値はすべて適切な評価値に割り当てられます。 [最小閾値] を下回る入力値は [最小閾値に満たない場合の出力スケール] に設定され、[最大閾値] を上回る入力値は [最大閾値を超える場合の出力スケール] に設定されます。

例を通して、5 つのシナリオのそれぞれについて、表の後に詳細を説明しています。

シナリオ 1

ツールのデフォルトを使用して関数を定義します。 上限閾値と下限閾値は、入力データセットの最小値と最大値に設定されています。 関数例として、指数が 2 でシフトが 2999.065 の Power 関数が使用されています。

閾値が入力データセットの最小値および最大値に設定された Power 関数の曲線のグラフ
閾値が入力データセットの最小値および最大値に設定された Power 関数の曲線のグラフ

入力ラスターの値の範囲は、3,000 ~ 5,000 です。 ラスター内のすべての値は、Power 関数を使用して変換されます。 関数値 f(x) の範囲は 4,000,000+ (シフト適用時) です。 この関数値の範囲は、出力ラスターで 3,000 の f(x) に 1 を割り当てられ、5,000 の f(x) に 10 を割り当てられて定義された 1 ~ 10 の評価スケールにリスケールされます。 この場合、最小入力値と最大入力値は、出力評価スケールでそれぞれ 1 と 10 に割り当てられます。

シナリオ 2

定義される下限閾値と上限閾値は、入力ラスターの値の範囲に収まります。 関数例として、指数が 2 でシフトが 3,500 の Power 関数が使用されています。

閾値が入力データセットの最小値および最大値内に設定された Power 関数の曲線のグラフ
閾値が入力データセットの最小値および最大値内に設定された Power 関数の曲線のグラフ

入力ラスターの値の範囲は、3,000 ~ 5,000 です。 下限閾値は 3,500、上限閾値は 4,500 に設定されます。 [最小閾値に満たない場合の出力スケール] は 1 に、[最大閾値を超える場合の出力スケール] は 10 に設定されています。 Power 関数は、3,500 ~ 4,500 の間の入力値に適用されています。 関数値 f(x) の範囲 (約 0 ~ 1,000,000) は、1 ~ 10 の評価スケールに変換されます。 入力値が 3,500 ([最小閾値]) のセルは出力評価スケールで 1 に、入力値が 4,500 ([最大閾値]) のセルは 10 に割り当てられます。 閾値の間のすべての値は、適切な評価スケールに割り当てられます。 入力ラスターの最小値と最大値は、出力評価スケール値に影響しない点に注意してください。 入力値が 3,500 を下回るすべてのセルは 1 を、入力値が 4,500 を上回るすべてのセルは 10 を割り当てられます (閾値パラメーターの下および上に定義された値)。これらの値は、関数値の範囲では考慮されません。

シナリオ 3

下限閾値と上限閾値は、入力データの範囲を上回っています。 関数例として、指数が 2 でシフトが 2,000 の Power 関数が使用されています。

閾値が入力データセットの最小値より小さく、最大値より大きく設定された Power 関数の曲線のグラフ
閾値が入力データセットの最小値より小さく、最大値より大きく設定された Power 関数の曲線のグラフ

入力ラスターの値の範囲は、3,000 ~ 5,000 です。 [最小閾値] は 2,000、最大閾値は 6,000 に設定されます。 Power 関数は、2,000 ~ 6,000 の間の値に適用されます。 2,000 または 6,000 に等しい入力値はありませんが、2,000 および 6,000 の関数値 f(x) を使用して、f(x) の下限と上限の範囲を定義します。 続いて、関数値の範囲は、1 ~ 10 の評価スケールにリスケールされます。 2,000 の関数値 ([最小閾値]) は、最小の f(x) なので 1 を割り当てられます。6,000 の関数値 ([最大閾値]) は 10 を割り当てられます。 ただし、2,000 または 6,000 に割り当てられた入力値はないので、1 または 10 に割り当てられた出力セルはありません。

このシナリオは、シカの生息地の適合性モデルを作成するときに役立つ可能性があります。 より広範囲のシカの個体群全体と比較して、分析範囲内の場所に対するシカの好みをモデルに反映させたい場合があります。 分析範囲では、基準の最小値は 3,000、最大値は 5,000 ですが、シカの個体群全体を含むより広い範囲では、最小値は 2,000、最大値は 6,000 です。

シナリオ 4

入力値は、連続的に増加または減少しない (1 つまたは複数のピークを含む) 関数の下限および上限閾値 (デフォルトのケース) にマップされます。 関数例として、中点が 4,000、拡散が 0.00000921 のガウス関数が使用されています。

閾値が入力データセットの最小値および最大値に設定されたガウス関数の曲線のグラフ
閾値が入力データセットの最小値および最大値に設定されたガウス関数の曲線のグラフ

入力ラスターの値の範囲は、3,000 ~ 5,000 です。 下限閾値と上限閾値は、入力データセットの最小値と最大値に設定されます。 Gaussian 関数は入力値に適用されます。 結果の関数値 f(x) は、指定された 1 ~ 10 の評価スケールに配置されます。 下限閾値と上限閾値の関数値は、最小の f(x) であり、出力評価スケールの 1 に割り当てられます。 中点 (4,000) の f(x) は最大の関数値であり、10 に割り当てられます。 この関数では、下限閾値と上限閾値は、評価スケールでそれぞれ 1 と 10 にマッピングされない点に注意してください。

シナリオ 5

シナリオ 5 は特殊なケースです。 関数例として、中点が 4,000、拡散が 0.00000921 のガウス関数が使用されています (シナリオ 4 と同様)。

閾値が入力データセットの最小値および最大値内で、中点の右側に設定されたガウス関数の曲線のグラフ
閾値が入力データセットの最小値および最大値内で、中点の右側に設定されたガウス関数の曲線のグラフ

入力ラスターの値の範囲は、3,000 ~ 5,000 です。 [最小閾値に満たない場合の出力スケール] は 10 に、[最大閾値を超える場合の出力スケール] は 1 に設定されます。 下限閾値および上限閾値は、ガウス関数の片側の値、4,250 と 4,500 に設定されます。 変更された閾値に設定されているデフォルトの中点と拡散は、指定された値で上書きされます (シナリオ 4 と同様)。 その結果、指定されたガウス関数 (閾値間で制約されない) は、4,250 ~ 4,500 の範囲の入力値にのみ適用されます。 関数値 f(x) の範囲は 1 ~ 10 の評価スケールにリスケールされます。[最小閾値] (入力値は 4,250) は評価スケールで 10、[最大閾値] (入力値は 4,500) は 1 に割り当てられます。