一般的な適合性モデリング ワークフロー

適合性モデリング ワークフローでは、何かを設置したり、エリアを保護したりするのに最適な場所を特定します。 適合性モデルを使用して、住宅地の開発、学校、会社の本社などの立地を選択します。 または、適合性モデルを使用して、野生動物保護や火災予防などのために、開発を行わない場所を特定することもできます。 どのような適用方法でも、一般的なワークフローは似ています。

適合性モデルを作成する、4 つの主な手順は次のとおりです。

  1. 基準データを特定して準備します。
  2. 各条件の値を共通の適合性スケールに変換します。
  3. 条件を相互に相対的に重み付けし、それらの条件を組み合わせて適合性マップを作成します。
  4. 立地決定や保護のエリアを特定する。

前述のモデリング ワークフロー手順を、次に示す適合性モデル例で使用して、ボブキャットの生息地の保護に最適な場所を特定します。 このモデルは例示するためのものであり、ボブキャットへのすべての相互関係を定義するものではありません。 この例ではボブキャットの生息地を特定しますが、ここに示す一般的な手順を応用して、前述のような多数の用途の適合性モデルを作成できます。

次の図に、適合性モデル ワークフローのサンプルを示します。

適合性モデリング ワークフローのサンプル
適合性モデリング ワークフローのサンプルを示します。

はじめに、適合性モデルの目標を明確にする必要があります。 たとえば、スキー場の立地決定の目標は、スキーに適した地形や雪の量を確保できる場所を特定することだけではありません。 全体的な目標は、収益を上げられるスキー場を作ることです。 スキーヤーにとって地形や雪は重要なので、これらの条件が満たされていると、収益性のあるスキー場候補地を選ぶことができます。 ボブキャットの適合性モデルの目標は、十分な生息エリアを確保し、今後 100 年以上にわたってボブキャットの個体数を安定させることが挙げられます。

目標を定めたら、モデルを評価するための方法を決定します。 スキー場の場合、評価方法は、予想年間利益によって測定されます。 ボブキャット モデルの場合は、ボブキャットのメタ個体群を保全することなどが挙げられます。このメタ個体群を、8 つのつながっている生息エリアに住む 6 つの下位個体群に分割します。

ステップ 1: 条件データを決定し、準備する

適合性モデルの最初のステップとは、モデルの対象の条件を特定することです。 このサンプル ケースでは、ボブキャットが生存するために必要なものを指します。 各条件は、モデルの全体的な目標 (ボブキャットの個体数を安定させること) を達成するために必要なものです。 特定された条件には、ボブキャットの生息地のニーズに応じた相互関係が取り入れられている必要があります。

ボブキャットの例では、次の条件が考慮に入れられます。

  1. 傾斜 - 一般的なボブキャットの生息地は、捕食動物から逃げられるよう、傾斜と起伏のある地形が好適です。
  2. 土地利用タイプ - ボブキャットは、開発地域や開発半ばの場所ではなく、森林や低木地に生息しています。
  3. 河川からの距離 - 保全する場所は、河川などの水源に近い場所にします。

傾斜と河川への距離のデータセットは最初から提供されているわけではないため、適切な Spatial Analyst ツールを使用して、既存のベース データをもとにこれらの条件を作成します。 傾斜を作成するには、標高サーフェスに [傾斜角 (Slope)] ツールを使用します。 それぞれの場所の最寄りの河川からの距離を確認するには、[距離累積 (Distance Accumulation)] ツールを使用します。

ステップ 2: 各条件の値を一般的な適合性スケールに変換する

傾斜、土地利用、河川からの距離が、適合性モデルで使用される条件です。 続行するには、これらを組み合わせる必要があります。 ただし、傾斜、土地利用、河川への距離のラスターを足し算するだけでは、意味のある値を得ることはできません。 たとえば、傾斜値が 5%、河川からの距離は 600 メートル、土地利用は 4 (単身向け住宅) の場所があるとします。 これらの値を足すと 609 ですが、これは意味がありません。 条件ラスターを足し算する前に、各条件の値を共通の適合性スケールに変換する必要があります。

この例では、1 から 10 の適合性スケールが使用されます。 条件の各値に対し、最も好適な場所の適合性値は高くなりますが、まったく好適ではない特性を持つ場所の適合性値は低くなります。 たとえば、傾斜が 25% 以上であれば適合性値は 10、4 ~ 6% の適合性値は 5、3% 未満であれば適合性値は 1 になります。

各条件の値を 1 ~ 10 の適合性スケールに変換する際、スケール内で相対的に値を変換します。 つまり、適合性値 5 が割り当てられた場所の好適性は、適合性値 10 が割り当てられた場所の半分ほどです。また、適合性値 10 が割り当てられた場所は、値が 1 の場所よりも 10 倍の好適性があると解釈されます。

この変換処理は、モデルで特定された各条件の各値に対して適用されます。 ボブキャット モデルの土地利用条件の場合、森林など好適な土地利用タイプには適合性値 10、住宅地は 5、工業地域には 1 が割り当てられます。 河川までの距離の条件については、河川に近い場所ほど高い適合性値 (9 や 10) が割り当てられ、遠くなれば値が低くなります (1 や 2)。 割り当てられた適合性値には、条件の間で同じ設定を持つことが望まれます。 つまり、適合性値 5 が割り当てられた傾斜は、同じく適合性値 5 が割り当てられた土地利用タイプや河川への距離と同じ設定である必要があります。

変換後の河川
変換後の河川からの距離マップ。 河川に近ければ近いほど、高い適合性値 (緑) が割り当てられます。

各条件の値は、互いに対して相対的に、共通の適合性スケールに変換されます。 変換した条件は組み合わせることができます。

ステップ 3: 条件を相互に相対的に重み付けし、それを組み合わせて適合性マップを作成する

変換した 3 つの条件を足し算すると、その和は 3 ~ 30 の間になります。 値が 30 の場所 (傾斜のある森林地帯で、河川にも近い場所) が最も好適な場所です。 値が低い場所は、その特性に基づいて好適ではないと解釈されます。

ただし、他の条件よりも重要なものがあるかもしれないので、足し算する場合に考慮します。 その場合は、その条件に対しては他の条件よりも重みを付けます。 はっきりと区別するために、ステップ 2 で説明した変換処理で、条件の値を相互に相対的に重み付けしています。 このステップの重み付けは、各条件の相対的な重要性を定めます。

ボブキャットのモデルでは、水源までの距離は傾斜や土地利用よりも 50% 重要であるとされています。 そのため、水源からの距離の値を変換した後に 1.5 の重み付け (乗算) を行ってから、他の条件と加算します。 傾斜と土地利用の変換後の重み付け係数は 1 のままです。

最終的な適合性マップ
最終的な適合性マップは、すべての条件を結合して作成します。 最も好適なエリアは緑色で示されています。

ステップ 4: 立地決定や保護のエリアを特定する

適合性マップが作成されました。 適合性マップは、各場所の属性に基づき、ボブキャットの立場から各場所の好適性を相対的に示します。

しかし、ボブキャットには空間要件もあります。 一定のエリアを複数の生息区域で分ける必要があります。この区域は所定の最小サイズから最大サイズまでの広さで、所定の距離よりも近かったり、あるいはそれよりも遠かったりしてはなりません。

これらの空間要件に基づき、ステップ 3 で作成した適合性マップから最適な場所を特定します。

陰影起伏を背景に表示した最適な場所
ボブキャットの生息地として保全する最終的な区域、陰影起伏を背景に表示

生息区域は、適合性マップの最も好適な場所 (緑のエリア) にあります。

サマリー

ここでは、適合性モデルを作成する一般的な手順を学びました。

  1. 重要な条件を特定する。
  2. 各条件の値を共通の適合性スケールに変換する。
  3. 条件の重要性を相対的に重み付けし、それを組み合わせて適合性マップを作成する。
  4. 定義した空間要件に基づき、適合性マップから最適な場所を決定する (この場合は、エリアの広さと区域の数)。

次の手順

適合性モデリング ワークフローの実装」をご参照ください。