領域の特定 (Locate Regions) ツールの詳細

[領域の特定 (Locate Regions)] ツールでは、入力ラスター内の領域の中から、指定されたサイズ要件と空間的制限を満たしている最適な領域を特定できます。 領域とは、同じ値が設定された一連のセルで構成されているグループです。 このツールで指定できる要件と空間的制限には、選択対象の合計面積、合計面積を分割して形成される領域の数、対象となる領域の形状、領域間の最小距離と最大距離などがあります。

ほとんどの場合、[領域の特定 (Locate Regions)] ツールは、最も効率的な方法で最適な領域を選択して結合するために、[コスト接続性 (Cost Connectivity)] ツールと組み合わせて使用されます。 この解析を行うには、まず適合性サーフェスが必要です。適合性サーフェスは、このツールセットに含まれる別のツールを使用して作成できます。 次に、[領域の特定 (Locate Regions)] ツールを使用して、使用可能な領域の中から、最適な領域を特定します。 最後に、[コスト接続性 (Cost Connectivity)] ツールを使用して、領域間の最小コスト パスを特定します。 適合性モデルを作成する方法の詳細については、「オーバーレイ解析について」をご参照ください。

[領域の特定 (Locate Regions)] を使用して解決できる問題の例

適合性モデルから作成したサーフェスを使用すると、次の場合に最適な領域を特定できます。

  • 最優先で保護するシカの生息地。 存続可能な個体数を維持するために 8 か所の生息地パッチ (領域) が必要であり、領域ごとに約 50 エーカーの一続きの土地が必要です。 個体群の中での繁殖機会をもたらすためには、シカが野生生物回廊を通って領域間を移動できるようにそれぞれの領域が相互に隣接していなければなりません。
  • 伐採作業で材木を採取するのに最適な場所。 財政的発展を可能にするには、少なくとも 250 エーカーの一続きの土地 (領域) を伐採する必要があり、それぞれの領域間の距離が 1 マイル以内でなければなりません。
  • 新しいショッピング センターの建設に理想的な場所。 ショッピング センターに必要な土地は 60 エーカーが最適ですが、建設の目的では一続きの土地が必要であり、建設用地 (領域) の形状をできるだけ小規模にしなければなりません。

領域へのセルのグループ化

適合性ラスター内の個々のセルから領域を作成する方法として、主に次の 6 通りの方法があります。

  • 1 つの領域にセルをグループ化する。
  • 面積が同じ一定数の領域にセルをグループ化する。
  • 領域間に設定された距離制限を順守して、面積が同じ一定数の領域にセルをグループ化する。
  • 領域に関して指定された最小面積要件と最大面積要件によってサイズが異なる一定数の領域にセルをグループ化する。
  • 特定された最小距離内に 2 つの領域が存在しないか、2 つの領域間の距離が最大距離を超えていないことを前提として、領域に関して指定された最小面積要件と最大面積要件によってサイズが異なる一定数の領域にセルをグループ化する。
  • 分析範囲にすでに割り当てられている領域を選択プロセスで考慮する必要がある点を除いて、上のオプションと同じである。

[領域の特定 (Locate Regions)] で使用される一般的なアルゴリズム

[領域の特定 (Locate Regions)] ツールで入力値として取得されるラスターは、値が大きいほどユーティリティの度合いが高いラスターです。 [領域の特定 (Locate Regions)] ツールは、このラスターから、指定された要件と空間的制限を満たしている最適な領域を選定します。

このツールで領域を特定するプロセスは、4 つのステップで構成されています。 実行する 4 つのステップと各ステップの詳しい説明を次に示します。

  1. 選択プロセスに不適合と見なされた場所を除外します。 このような場所の例として、水域内の場所、既存の建物、急勾配の地域などがあります。 このステップは、前処理ステップです。
  2. 対象となる領域 (1 つまたは複数) の特性を定義します。 このような特性の例として、サイズ、形状、方向などがあります。 このステップを実行するには、ツール内でパラメーターを設定します。
  3. 領域の形状の維持とユーティリティの最大化とのユーザー定義のトレードオフに基づいて、入力ラスターからすべての候補領域を特定します。 このステップを実行するには、ツールに実装されている領域拡大アルゴリズムを使用します。
  4. ユーザー定義の評価基準を使用して、候補領域の中から最適な領域 (1 つまたは複数) を選択します。 たとえば、最大平均値が指定された領域だけを選択します。 このステップをツール内で実行するには、指定された評価方法を使用して選択アルゴリズムを適用します。

候補領域を特定する主要なアルゴリズムでは、特定された各セルを領域の拡張元のシードとして処理するパラメーター化領域拡張 (PRG) 方法が使用されます。 領域に追加する一連のセルの選択は、領域の希望の形状を維持するためのセルの貢献度とセルの属性値のユーティリティ (適合性) とのトレードオフの評価に基づいて行われます。 属性値が大きいほど、ユーティリティの度合いが高くなります。 潜在的な候補領域は、領域に関して指定された面積要件が満たされるまで拡大を続けます。 この拡大プロセスは、シードごとに実行されます。 結果として生成された各領域は候補の選択肢と見なされ、この段階では、重複している候補領域が多数存在します。 このステップではセルの割り当てが行われないので、セルが複数の候補領域に属している可能性があります。

最適な領域 (1 つまたは複数) を選択するには、選択アルゴリズムを実行します。これにより、PRG 方法で特定された各候補領域が評価され、次の基本設定に基づいて最適な構成が実現されます。

  • 指定された [評価方法] 基準 (最大平均値、最大合計値、最大エッジ量など)。
  • 領域間の評価基準 ([最大距離] パラメーターと [最小距離] パラメーターで指定する)。

複数の領域が必要な場合は、[選択方法] で、最適な領域の選択方法に対する追加制御を指定します。 これには、COMBINATORIALSEQUENTIAL があります。

  • COMBINATORIAL 方法を選択した場合は、必要な数の領域の考えられるすべての組み合わせが評価されます。 たとえば、この方法を使用すると、[領域の数] が 8 に設定されており、PRG 方法で作成された潜在的な領域の数が 150,000 の場合に、150,000 の候補領域に含まれる 8 つの領域のすべての組み合わせがテストされ、[評価方法] と空間的制限に準拠した 8 つの最適な領域が特定されます。 唯一の最適な領域であっても、8 つの領域の最適な組み合わせに含まれていないと、選択されない場合があります。
  • SEQUENTIAL 方法を選択した場合は、最初に選択された領域が [評価方法] と空間的制限に準拠した最適な領域になります。 2 番目に選択された領域は、最初に選択された領域の次に最適な領域であり、評価方法と空間的制限に準拠しています。 このプロセスは、[領域の数] が一致するまで継続されます。

候補領域が重複している場合がありますが、セルは 1 つの領域にしか割り当てることができません。 1 つの領域を選択すると、セルがすでに割り当てられている残りの候補領域はこれ以降の領域の選択プロセスで考慮されなくなります。 これらの候補領域に含まれているセルは、その他の候補領域として考慮されます。

シードの分布方法

処理時間を短縮するために、入力ラスター内の使用可能なすべてのセル位置から領域を拡張する代わりに、シードとして特定されたセル位置から候補領域を拡大することができます。 領域の拡大元のシードの数は、[拡大元のシードの数] パラメーターで制御できます。

入力ラスター内のユーティリティ値の空間分布に基づいて、指定された数のシードがラスター全体に分布されます。 つまり、ユーティリティ値が最も大きい入力ラスター内の場所にシードが多く配置されることになります。 このため、ユーティリティ値が最も大きい入力ラスター内の場所に最適な領域が存在する可能性が高いと推測できます。

シードの位置を特定するために、入力ラスターのすべてのセルとそのユーティリティ値から分布が作成されます。 ユーティリティ値の大きいセルでは、分布の比率が高くなります。 シードが配置されたセル位置を特定するために、この分布からランダムに値が選択されます。 ユーティリティ値の大きいセルは分布の比率が高いので、これらのセルの位置が選択される可能性が高いことが予想されます。

シード同士が極端に接近して配置されないように調整が加えられます。また、特定の場所に分布されるシードの数がその場所に含まれるセルのすべてのユーティリティに比例するように設定されます。

シード分布の例

簡単な例として、4 つのセル ラスターがあり、これらのセル ラスターにユーティリティ値 1、2、3、および 4 が設定されているとします。 4 つの値から分布が作成されます。 これらのセルの値の合計は 10 です。 これらの値が 0 ~ 1 のスケールに調整されます。 ユーティリティ値が 1 のセルは分布に 10 パーセント貢献し (分布の 0 ~ 0.1 の範囲)、値が 2 のセルは 20 パーセント貢献し (分布の 0.1 ~ 0.3 の範囲)、値が 3 のセルは 30 パーセント貢献し (分布の 0.3 ~ 0.6 の範囲)、値が 4 のセルは 40 パーセント貢献します (分布の 0.6 ~ 1 の範囲)。 0 ~ 1 のランダムな値が選択されます。 ランダムな値が分布の 0.6 ~ 1 の範囲に収まる確率は 40 パーセントです。これは、値 4 が割り当てられたセル位置 (ユーティリティ値が最も大きいセル) にシードが配置されることを意味します。

対象となる領域のサイズに基づいて領域拡大の解像度を調整する

[拡大元のシードの数] パラメーターを使用して処理時間を短縮できるだけでなく、[拡大の解像度] パラメーターを使用してパフォーマンスを上げることもできます。 [拡大の解像度] パラメーターを使用すると、解像度の低い中間の入力ラスターで拡大するように PRG アルゴリズムに指示することができます。 この場合は、中間ラスターを使用して候補領域の中から目的の領域を選択すると、選択された領域が [セル サイズ] にリサンプリングされ、最終的な出力レイヤーが生成されます。 中間ラスターの解像度は、指定された [拡大の解像度] に関連付けられているセルの数によって決定されます。

生成された各領域に十分な数のセルが含まれるようにするために、また不要な処理を削減するために、中間ラスターの対象となる [拡大の解像度] で特定されたセルの解像度と合計数が調整されることがあります。 指定された [拡大の解像度] によって決定された解像度に基づいて、平均領域サイズに含まれるセルの数が特定されます。 平均領域サイズを算出するには、対象となる合計面積を指定された領域の数で除算します。 選択された各領域に十分な数のセルが含まれるようにするために、平均領域サイズに含まれるセルの数が少な過ぎる場合は、中間ラスターの解像度を上げます (セルのサイズを縮小すると、セルの数が増えます)。 不要な処理を削減するために、平均領域サイズに含まれるセルの数が多過ぎる場合は、中間ラスターの解像度を下げます。

平均領域サイズに含まれるセルの数が少な過ぎるか多過ぎるかを判断するための閾値は、選択された [拡大の解像度] によって求められます。 たとえば、LOW 解像度オプションが選択されており、妥当な結果 (ここでは 1,800 未満のセル) と照らし合わせて平均領域サイズに含まれるセルの数が少な過ぎる場合は、1,800 以上のセルが平均領域サイズに含まれるように中間ラスターの解像度を上げます。 これで、十分な数のセルが含まれるようになり、妥当な領域が生成されます。 逆に、不要な処理を削減するために、平均領域サイズに 5,400 を超えるセルが含まれている場合は、平均領域サイズに含まれるセルの数が 5,400 になるまで、LOW 解像度オプションが選択された中間ラスターの解像度を下げます。

[拡大の解像度]MEDIUM および HIGH が選択されている場合にも同様の調整が加えられますが、閾値はそれぞれ異なります。 解像度が MEDIUM の場合、平均領域サイズに含まれるセルの数の下限は 3,200、上限は 9,600 です。 解像度が HIGH の場合、平均領域サイズに含まれるセルの数の下限は 7,200、上限は 21,600 です。

この調整の結果として、指定された [拡大の解像度] で PRG が実行されるリサンプリング済みの中間ラスターの合計セル数が対象となるセル数を下回ることや上回ることがあります。

最小面積と最大面積を指定して領域を特定する方法

[領域の最小面積][領域の最大面積] を指定すると、指定された最小サイズと最大サイズの間にあるすべての領域サイズがシードごとに考慮される場合に、比較対象となる領域の組み合わせの数が膨大になります。 このため、最適な領域を特定できるように、サイズが最小サイズと最大サイズの間にあり、PRG プロセスで作成され、COMBINATORIAL および SEQUENTIAL 選択プロセスで考慮される領域の数がシードごとに設定されます。

最小、最大、および平均領域サイズに基づいて、すべての領域サイズが生成されます。 このアルゴリズムでは、合計面積を指定された領域の数で除算して、平均領域サイズが算出されます。 平均領域サイズは、シードごとに生成される最初の領域サイズです。 通常、平均領域サイズは、指定された最小面積または最大面積のどちらかに近いサイズになります。 つまり、Abs(最大 - 平均) または Abs(最小 - 平均) のうち、大きい方の間隔になります。 この値は、LargerDist とも呼ばれています。

ステップ間隔を算出し、平均領域サイズと大きい方の間隔の間にある領域サイズを定義するには、次の式を使用します。

StepInterval = LargerDist/(N - 1)
  • ここで、N は、指定された領域の数を示します。

平均領域サイズに対して StepInterval の加算または減算を実行し、大きい方の間隔の値に達するまで繰り返します。 この逆の場合にも、StepInterval の加算または減算を実行し、小さい方の間隔の値に達するまで繰り返します。

この処理手順では、領域サイズの数が 4 未満の場合に、既存の各値の間に 2 つのサイズが追加されます。 領域サイズの数が 4 以上 6 以下の場合は、既存の各値の間に 1 つのサイズが追加されます。 したがって、シードごとに作成される領域サイズの最小数は 7 であり、最大数は、指定された領域の数によっても異なりますが、15 になります。

これらのパラメーターの操作方法については、このセクションで後から例をいくつか挙げて説明しています。

[領域の最小面積][領域の最大面積] を指定すると、COMBINATORIAL または SEQUENTIAL 選択プロセスの実行時に、それぞれの領域サイズがシードごとに候補領域と見なされ、最適な領域を特定するためにテストされます。

[領域の最大面積] を指定せずに、[領域の最小面積] のみを指定した場合は、設定された最小面積、合計面積、および領域の数から最大面積が求められます。 たとえば、[領域の最小面積] が 5 平方マイル、合計面積が 50 平方マイル、領域の数が 5 に設定されているとします。 これらの領域のうち、4 つの領域のサイズが最小面積であると想定して、最大面積が求められます。この例では、1 つの領域の最小面積が 5 平方マイルであるため、4 つの領域を合わせて 20 平方マイルになります。 残りの 30 平方マイルが最大面積になると見なされ、この値が割り当てられます。 [領域の最大面積] のみを指定した場合にも同じロジックが適用されますが、最小面積を 0 より大きい値に設定する必要があります。

例 1

この例では、各パラメーターが次のように設定されています。

  • [合計面積] = 300 平方マイル
  • [領域の数] = 6
  • [領域の最小面積] = 40 平方マイル
  • [領域の最大面積] = 100 平方マイル

PRG で作成される最初の領域サイズが平均領域サイズになり、平均領域サイズは合計面積を領域の数で除算して求められるので、この場合の平均領域サイズは 50 平方マイルになります (300/6)。 LargerDist は 50 です (LargerDist = Abs(100 - 50))。 StepInterval は 10 です (StepInterval = 50/(6 - 1))。

シードごとに作成される 2 番目の領域サイズを特定するには、StepInterval を平均領域サイズに加算します。この場合の計算結果は、10 + 50 = 60 平方マイルになります。 大きい方の間隔の値に達するまで、平均領域サイズへの StepInterval 値 10 の加算を繰り返します。 これにより、3 番目、4 番目、5 番目、および 6 番目の領域サイズが特定され、それぞれのサイズが 70、80、90、および 100 平方マイルになります。 最後に、小さい方の間隔の値に達するまで、平均領域サイズからの StepInterval の減算を繰り返します。これにより、作成する 7 番目の領域サイズが特定され、ここでは 40 平方マイルになります。 この例では、シードごとに作成される領域の数は 7 であり、それぞれのサイズは 40、50、60、70、80、90、および 100 平方マイルになります。

例 2

この例では、各パラメーターが次のように設定されています。

  • [合計面積] = 100 平方マイル
  • [領域の数] = 4
  • [領域の最小面積] = 10 平方マイル
  • [領域の最大面積] = 60 平方マイル

PRG で作成される最初の領域サイズが平均領域サイズになり、平均領域サイズは合計面積を領域の数で除算して求められるので、この場合の平均領域サイズは 25 平方マイルになります。

LargerDist は 35 平方マイルです (Abs(60 - 25))。 StepInterval は 11.6667 です (35/(4 - 1))。 大きい方の間隔の値に達するまで、平均領域サイズへの 11.6667 の加算を繰り返します。これにより、値 36.6667、48.3334、および 60 が求められます。 差が最小値と同じになるか、最小値を下回るまで、平均領域サイズからの StepInterval の減算を繰り返します。これにより、値 13.3333 が求められます。 この結果、領域サイズの数は 5 であり、それぞれのサイズは 13.3333、25、36.6667、48.3334、および 60 平方マイルになります。 小さい方の間隔が作成された最小値または最大値は、必ずしも領域サイズに含まれるとは限りません (この例の場合、13.3333 - 11.6667 = 1.6666 は 10 未満です)。 また、シードごとに作成される領域サイズの最小数は 7、最大数は 15 です。 5 は必要最小数の 7 を下回っているため、5 つの各領域サイズの間に新たな領域サイズが追加されます。 この例では、シードごとに作成される領域の数は 9 であり、それぞれのサイズは 13.3333、19.1667、25、30.8334、36.6667、42.5001、48.3334、54.1667、および 60 平方マイルになります。

参考文献

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